老齢化と帝王

フジテレビが大騒ぎである。

有名タレントがフジテレビ所属の女子アナに性的不埒を行ったらしいとYouTubeなどでは、盛んに報じられているが、どれも一次情報ではない。なぜなら、被害者と加害者は9千万円の示談金で和解しているとのことで、守秘義務があるからということで、情報は漏れ出てこない。

被害者が漏らしたら9千万円は返さなければならず、漏らすメリットが9千万円以上でないとうかつにはしゃべれないという背景もあるようだ。

調べてみれば、性被害は親告罪ではないようだから警察なり検察が動けば立件できるのだろうけれど、有名タレントがかつて所属していた有名事務所の「帝王」は、立件さえされれば戦後最大規模の性犯罪「帝王」であったが、警察も検察もメディアも、全く動かずに見て見ぬふりをしてきた。

それが言いたいのではない。自民党の裏金議員は国会であろうが都議であろうが、議員のほとんどは立件されることすらなく、捕まるのは会計担当者とか秘書である。

しかし、それが言いたいのではない。

フジテレビの「帝王」が87歳だということである。しかも、40年近く君臨しているのだそうだ。引け際が分からないほど、権力に酔いしれている。権力に酔いしれているから、尾を振るイエスマンが側近に侍ることとなる。側近の求められている能力とは「帝王」をいい気分にすることになる。

つまり、帝王が喜ぶことに専念することが主要な役割となる。これは、歴史が示している。

2世、3世も大いなる害をなすけれど、老害に比べれば随分と毒性が薄い。それは、2世、3世となるにしたがって能力も希釈されるが、同時に毒性も希釈される。能力が低いのに権力があるというのにも問題はあるのだけれど。

もっとも、組織を腐らせるのは「老害」と、長い君臨体制である。ありていにいえば、既得権益。

フジテレビと自民党には、それが備わっていることを如実に示しているが、日本の大方の大規模組織が、世界と戦えない大いなる原因となっていることの原因ともなっている。

長く続く帝王であっても、能力が低くいことを自認していれば幕僚が頑張るということで組織の健全性をかろうじて維持することもできるが、老害垂れ流す「帝王」が、いかに無能であっても、自認できていないから、醜態をさらすまで君臨することとなる。

なぜ身を引けないかというと、まずはその人間の品性に原因がある。しかし、大企業ともなればガバナンスの問題である。アメリカの大統領でさえ2期8年を上限としている。権力を持つということは、長ずれば「腐敗」することを承知しているだけのことだ。

それがガバナンスされていない組織だと、このような老害がまかり通る。中小零細ならいざしらず、大企業において「帝王」が87歳がまかり通るのは、とても先進国とはいいがたい。もちろん、政治も同じことだ。