「虎馬」を調べる

「トラウマ」とは、虎が馬を襲う馬の気持ちを言うのか思っていたら、全然違っていた。そもそもはギリシャ語だそうで、ようはフロイトが「精神的外傷」という意味で用語化していた。

「trauma(トラウマ)」がドイツ語圏で使われたまま、英語圏でも使われるようになり、例によって創意も工夫もない日本ではカタカナにして使っている。

このトラウマが父母から遺伝しているのではないかというのがアメリカ人の精神医学の先生だそうだ。

この手の、医学的な分析から導き出した因果関係が明確ではないジャンルで、しかも「アメリカ」というと、大方は「眉唾」が多い。かれらのレポートでは、最後には「思われる」と「継続的な調査が望まれる」でチャンチャンになることがほとんどでもある。

ポイントは「エピジェネティック」になる。エピジェネティックとは「DNAの塩基配列を変えずに細胞が遺伝子の働きを制御する仕組み」とのことで、それ以上踏み込むとかなり面倒なことになるので、そういうことにしておく。

アメリカの先生はホロコーストを経験した人々の子孫と、それを経験しなかったユダヤ人の子孫を比べている。そこで先生は、卵子に変化が起きていると推論している。

ところがマウスの実験でも実証されているらしい。

とはいえ、生活環境を豊かにする「環境エンリッチメント」によってトラウマに関連した行動を減らせる「かもしれない」という記述も付記されている。

そこで、「環境エンリッチメント」を調べてみると、「飼育動物の福祉と健康を向上させるために、その生息環境や行動に基づいて飼育環境を改善・向上させる工夫」と説明されいて、やはり怪しい終わり方になっている。

しかし、捨てる神だけではなく拾う神もいるのが世の常です。「親の受けたストレスは、DNA配列の変化を伴わずに子供に遺伝」というレポートが2011年に我らが理化学研究所から出されていました。

こちらは日本の先生に由るので信頼性は俄然高いです。ヒストンとかクロマチンが出てくるので、その辺は端折りますが、結論は「ヒストンをメチル化する酵素と結合し、ヒストンをメチル化してヘテロクロマチン構造を作り、転写を抑制する」ことによってメンデル的ではない遺伝についてのメカニズムを発見しているのが、「我らの日本」の学者であったということでした。

追記

小学5年生の長井丈くん(10歳)が、京都で開催されたICE(国際昆虫学会議)で「アゲハの記憶の遺伝」の研究で世界を驚かせた。

「アゲハの幼虫期の記憶が成虫になっても残り、その記憶が子や孫に遺伝するのかを調べました」とのこと。「親の受けたストレスは、DNA配列の変化を伴わずに子供に遺伝」していることを奨学5年生が証明し、英語で発表している。

一流の学者2名つけてトンボの研究をしたヒトもいた。