サイゼリアに関して

ともかく安い。驚愕の安さで、時間によってはすぐには座れない。

サイゼリアの哲学の根底にある考えは「マックのハンバーガーは世界一売れているが、世界一おいしいわけではない」ということ。

ライバル企業を分析して自社の戦略に役立てよう、他社がこうやっているから自分たちはこういうメニュー構成でやっていこう、といった比較すらほとんど行われていないそうである。

顧客満足度を分類するモデルに「狩野モデル」というのがある。主観的側面と客観的側面でとらえる。客観的な側面とは、性能や仕様への適合度。主観的側面は、端的には満足度。

単純なモデルでは、品質を上げれば顧客は満足するという提供者サイドからの想定。例えば、同じ価格で車の馬力を2倍にすれば、顧客満足度が2倍になるかと言えば、そういう線形関係にはない。

もっと細かに品質要素を分類している。

とかく、顧客を対象にする飲食店や小売店では、魅力品質で勝負をしようとする傾向が強いが、魅力品質で勝負する以上は、常に新しい商品展開が求められるようになるので、コストもかかるしいずれは行き詰まることが多い。

サイゼリアの置いている力点は「当たり前品質」で、消費者に飽きを感じさせない商品展開だ。髯をはやしたオーナーシェフが展開する「魅力品質」では、味が少し変わっただけで顧客がリピートしなくなることもある。

たとえば、常連客を名前で呼ぶようなサービスでは、少し間を開けて来店した時に名前で呼ばれなかったりすると、リピーターから離脱してしまう。「常連」を自負する顧客にある傾向で、ちょっとしたことで逆鱗に触れるようなこともあるので、誰がやっても当たり前なサービスが一番長続きがする。

飲食店での「逆品質」で典型なのことは、机がガタガタするとか、椅子の座面の布が切れていたり汚れていたりすること。あるいは、メニューが汚いこと。トイレが汚いこと、小便臭いこと。

おまけ

サイゼリヤの人気メニューに「ミラノ風ドリア」があり、480円だったのを290円に値下げした。値下げの目的は客数アップ。190円下げるための根拠は、どこにもない。ドリアだけ食べて帰る客も少ないから売上向上の要因とすることができる。

リピートが取れなければ、いかなる商売も生き残ることは難しい。顧客が、なぜリピーターになってくれるかを徹底的に考える必要がある。

「高くてうまい」は「安くてまずい」と、意味的には等価である。価値としては個々の主観で決めればいい。高くてまずければ2度目はない。ところが、安くてうまければリピータになる可能性が格段に上がる。

しかし、安くてうまいとするなら「素材」「製法」に、何かが無ければ継続が難しい。つまり、料理屋とするなら「高くてうまい」店より格段に工夫(ノウハウ)が必要になる。