人はなぜ老いるのか
それは、時間が1方向にしか進まないからである。老いるのは、別に人だけでなくすべての動植物に言えることで、動植物に限らず物質全般に言えそうだ。
2017年の記事に、
東京大学大学院工学系研究科物理工学専攻の伊與田英輝助教、金子和哉大学院生、沙川貴大准教授は6日、マクロな世界の基本法則である熱力学第二法則を、統計力学の概念を使うことなくミクロな世界の基本法則である量子力学が理論的に導出することに成功した
とのことで、このことから「日常世界で、なぜ時間が一方向にしか進まないのかを解明するカギ」となるそうだ。熱力学第二法則によれば、「断熱された系のエントロピーが減ることはない」ということで、「室温の空気中に熱いコーヒーを放置しておくと冷めてしまうが、その逆、つまり冷えたコーヒーが勝手に温まることは起きない」ということになるそうだ。
ところがシュレディンガー方程式には、「時間反転に対して対照的という性質がある」らしい。そうなると場面によっては熱力学と量子力学とでは矛盾するように見える。
「多体系の量子力学にもとづいて第二法則を導出。さらに、『ゆらぎの定理』と呼ばれる熱力学第二法則の一般化を、同様の設定で証明することにも成功」してから7年経っているけれど、時間はいまだに一方向にしか進んでいない。
時間を戻そうというのではなく、時間が一方向にしか進まないことを当たり前だとしているのは一体どうしてなのかということ。
例えば、エネルギーを考えてみると、平らな地面をボールを転がせば、いずれは止まる。それは、摩擦によって熱に変わるから、動くエネルギーが熱に変わっただけでエネルギーの総量は不変だという。
物質は「有」であり「無」からは生じえないはず。では、宇宙が誕生たときの総エネルギーから物質が生まれているはず。とするなら、これだけの満天の星と、いまだに膨張し続けている宇宙のエネルギーも、宇宙が誕生した時から不変ということになる。
熱力学第二法則では、エントロピーは時間とともに大きくなるという。宇宙がいまだに拡大しているそうで、それをエントロピーで考えると、星と星の間もいずれは極大になるはずである。これを「乱雑」というなら、その逆の、宇宙が誕生した時はエントロピーが極小であったということになる。その時のエネルギーは極大であった。
ということは、宇宙のエネルギーは、拡大することによって何に変わっているのだろうか。当然、拡大するエネルギーが消失していくはずだ。しかし、不変だという。
物理の世界では、「拡散」、あるいは「乱雑さ」と時間には関係があることが推理されている。乱雑さと言えばきれいなプールにインクを1滴たらすと、敢えてかき混ぜなくても拡散していく。
これを分子で説明するならエネルギーが生じているはずだ。そのエネルギーはどこから生じているのだろうか。
光は光速で動くという。光速になると時間が止まり質量が無限になるという。しかし、太陽から届く光に無限の質量があるようには思えない。つまり、「分からない」ということのようだ。
アーキア(古細胞)の共通祖先を「ルカ」というらしい。アーキアには、すでにDNAが備わっている。だから進化してきた。では、どうしてルカにはDNAがあったのか。当然であるが、無ければ「祖先」にはなり得ない。
では、ルカはどうやっDNAを手に入れたのだろうか? これは拡散ではない。むしろ修練である。進化は拡散か? 拡散だったら崩壊していたはずである。文化の進化は収斂するがゆえに拡散するように思える。動植物の進化も収斂するがゆえに拡散しているようだ。
これも分からない。
宇宙も、生物も、時間も「分からない」ことだらけである。にもかかわらず「分かった」ことの功績に対してノーベル賞が授与されている。ということは、ノーベル賞の打ち止めはお金がなくなった時であって、それまでは授与し続けられるくらい「わからない」ことが充満している。