医療用の吸血ヒル

19世紀において、ヨーロッパの医療用ヒル(Hirudo medicinalis、イヨウ(医用)ビル)の需要が、このヒルを絶滅寸前まで追い込むほど高まっていたそうだ。

万能薬としてその医療効果がヨーロッパ中で宣伝され、がんから結核、精神疾患まであらゆる病気の治療に使われた。事の発端はフランス、パリの病院で、天然痘からがんに至るまで、すべての病気は炎症の結果であり、血を出すことこそが治療法であるとしてヒルを使った。

需要に応えるため病院が頼ったのは、野生のヒルを集める農村労働者で、淡水の池やぬかるんだ水路に足を踏み入れ、自身の体を餌にしてヒルを集めた。

ヒルは、それぞれ約100本の歯がある3つの顎(あご)で獲物に噛みつき、大さじ1杯分(15ミリリットル)程度の地を血を抜き取ると簡単に取り外すことができる。

かまれてもヒルの唾液に麻酔成分があるため痛みを感じないまま血を吸われ、吸血痕からの出血を見て気がつく場合がある。また、血液の凝固作用を妨げる成分も含まれていて、流血が広がりやすいが、通常、傷は数日で治る。

血の凝固を防ぐ力があることから、古来より瀉血などの医療用としても用いられてきた。日本では、法令上、ヒルに人間の血を吸わせる行為は医療行為となる。

ヒルと言えば、その昔、職場の課長が痔の治療にヒルを使っていたことを思い出した。効果があったのかは不明。おそらくイボ痔だったのだろう。

それと、泉鏡花の「高野聖」には、「蛭」が19か所も登場している。

話はヨーロッパに戻すとこれらに効き目がなかったこともあってだんだん下火になっていたそうな。それと、乱獲され蛭自体が大量に使えなくなってきたこともあったようだ。採取するのも、自らの血を提供するのだから大変な労作だったし、そもそも、蛭が吸血するようになるのに2、3年くらいかかったようだし、いろいろな背景があって衰退していった。

が、いまでも医用に使われているとのこと。