平均の勤続年数について気になったこと
厚生労働省が作っている「賃金構造基本統計調査」によると令和2年では労働者の平均勤続年数は「11.9年」。アメリカでは「4.1年」。
ところが、天下のグーグルでは、なんと「1.1年」!
やりがいがあって、福利厚生が充実していて何の不足があるのでしょうか? 食事も3食無料で食べられます。
それらに関わらず離職していく原因は「プレッシャー」。締め切りとノルマで健康を害するほどに追いつめられるとしたらどうでしょうか。
グーグルの社員の53%は「極度のストレス」を感じているようです。応募しても面接までたどり着くのはハーバードに入るよりも難しいくらいで、運よく雇用されても日常的なストレスの中で競争に勝ち続けなければ生き残れません。
世界で最も賢い人たちと仕事しなければならないわけで、生産性、創造性などにおいて目立つような功績を上げなければ昇進はおぼつきませんし、仮に昇進できれば同僚との軋轢が生まれます。
そのような中で継続して勤務するより、グーグルで働いていたという経歴を履歴書に記載すれば転職はかなり有利に展開することができます。
翻って30年間停滞している日本はどうなのかというと、大方の正社員は定年まで企業にしがみつくことになります。やりがい、生きがいは5時から後の時間で見つければいいのであって、勤務時間は自分を殺せればさほどに苦痛でもありません。
2019年の記事に「1位は京阪電気鉄道で平均勤続年数26.5年」というのがありました。平均勤続年数20年以上の会社108社を業種別でみると、電力・ガスと電子部品・機器が10社ずつランクインしているとのことです。
また、新卒しか雇用しない企業も2割ほどあるようです。ようは「ジョブ型雇用」のような人材の流動化とは真逆の雇用環境にあると言えそうです。
一般化することは出来ませんが、しのぎを削るようなハイリスク・ハイストレスな職種と言えば、日本ではおおかたは営業職になりそうす。大企業は食える体質を確立しているので、人間関係さえうまくやっておけばそこそこ何とかなるでしょう。
ということは、結果として職場にしがみつくことになり、上司のポチになり、仕事で成果を出すのではなく、仕事は自己のアピールの手段にしかならなくなり、改革やイノベーションが起きずらくなっていくわけです。
やはり日本では、官僚機構を含めて官僚化した組織において「ジョブ型雇用」による人材の流動は難しいことが予想され、30年の停滞は40年となり50年となって社会が老成化していく公算が高そうです。
その理由は明確で、組織で権力を持っている人たちこそが「ジョブ型雇用」で流動していくべきなのに、それを阻止しているのが、やっと階段を上の方にあがってきた人たちこそが、その権力のポストを既得権化しているからにほかなりません。
明治維新のような社会的大変革が起きることによってグーグル的雇用環境になっていくことが予想されますが、それが「福」となるのはごく限られた有能な人だけで多くの人々(特に経営層や管理層)にとっては「禍」のほうが大きいように思えます。
付記
足軽や足軽以下であった人材が明治維新によって権力を手にして、新しい時代をどのように作っていったかというと、結局は多大な利権と富を手にして最高権力を既得権益化して頂上に安座しました。
それ自体は幕藩体制と本質はさほど変わらなかった。つまり、いかなる能力があろうが、運がよかろうが、人間のサガとして権力を手にしたら、その権力を手放したくはなくなるわけで、その時点で流動性は喪失されてしまうわけです。
車なんて走ればいいだけの道具なのに高級車を乗りたがり、時計なんて時を示すだけでいいのに高級時計をいくつも買いたがる。住まいなんて雨が漏れず暖を取れればいいだけなのに億ションを欲しがる。
その傍らで、金に困って強盗団に与するものや、女子は売春に身を落としていく。
幸いにして得た富や権力を、どんどん、次世代に回していけば世の中はきっと今よりは良くなる可能性がありそうだけれど、それはバラまきでは実現できないし、政治の仕組みにするなら社会主義と何ら変わらず結果として停滞する。
つまり、すべてにオッケーとはいかないのが人の世であるということか。