平安時代の辞書など

「誤字」とは、漢字を間違えて使ったり、必要な助詞や送り仮名を抜かしたり、といった文章上の誤りのこと。「よく注意して書くとか推敲・校正をするとかすれば直せるはずの凡ミス」の総称、のような意味で用いられることが多い。

日本語には「同音異義語」や「異体字」がたくさんあるので「誤字」は頻発する。まして、漢字変換を使えば、書くことすらできないような漢字を容易に使うことができるようになったことも「誤字」を頻発させる原因になっている。

さらには「俗字」というのがあって、正字に対して世間一般で通用している略字を使うことも少なくない。そのうえ、敗戦してから当用漢字1850字を制定し、2010年には常用漢字として2136字を選定している。

「現代仮名遣い」「常用漢字表」「送り仮名の付け方」などを組み合わせて「正書法」ができてる。

文字を調べるために辞書がある。それを「国語辞典」という。しかし、「漢和辞典」というのもある。これは、漢字を日本語(和語)にする辞典という意味になる。

誤字の原因として考えられる要因の一つに、「音読み」「訓読み」がある。和語として漢字を解釈するなら「訓読み」にしていくことで、漢字の意味が日本的に理解することができるはずである。

そのことを荻生徂徠は指摘していた。彼は、漢文を上から下へと音読みをしていたようだ。なまじ、漢文を読み下し(訓読)することで正確な意味から離れることを危惧していたようだ。

訓読みしたことで、漢字本来が持つ意味から離れて、違う意味が定着してしまった漢字も少なくないようだ。

明治期に大量に入ってくる西洋文化を日本語化する過程で、漢字訓読用法を前提に熟語化した語彙が多く作られていった。そのことで、さらに漢字の意味が日本なりに固定化していくこととなった。

文字の無かった日本において漢字が入り、その漢字を「音」として使ったのが万葉仮名になる。この表記法は、漢字の意味を無視して、その字の持つ音(音読みまたは訓読み)だけを使って日本語を表す方法であった。

そののち、漢字が持っている意味と和語の意味が習合していき、奈良・平安時代になると貴族や僧侶が漢文を使うようになり、漢字を省略することから平仮名が発明され、「真名(漢字)」と「仮名」となっていく。

漢字の原点として、日本最古の漢和辞書として『類聚名義抄』(るいじゅみょうぎしょう)というのが平安時代の後期に編纂されている。現代に至るまで残る日本語辞典編纂の基盤となり、平安時代の学問や漢字の使われ方を理解する上で貴重な資料とされている。

つまり、和語があり漢字が入ることで万葉仮名として使われ、それが定着することから漢文が使われるようにもなる。同時に、漢字は画数が多くて面倒なので平仮名が発明される。にもかかわらずハイソサエティの教養として漢文も定着していく。にもかかわらず同時並行に和歌が日本の言語文化として定着していく。

明治になって横文字が大量に入ってくると、それを漢字熟語化していく。そのあたりまでは、かろうじて日本人にとっても漢字文化が維持できていたけれど、敗戦後の当用漢字・常用漢字において、文化としての漢字は、言語としての思想性を離れ、単なるコミュニケーションの道具に成り下がった。