年のわりに若い人

要するに老化とは細胞が古びてくることに帆ならない。細胞分裂の回数がどうとか、変異がどうとか言うけれど、ポイントは個々の細胞がしなびれてくることが老化の実態である。

DNAのメチル化という提唱もある。エピジェネティックに原因があるとする提唱もある。エピジェネティクスとは、DNAの塩基配列を変えずに細胞が遺伝子の働きを制御する仕組みのこと。DNAやそれを取り巻くタンパク質の化学修飾により遺伝子発現が制御される生命現象をいう。

ある研究所の研究では、1年間にどれだけ生物学的年齢が進んだかを数値化しているそうだ。それによると、同じ365日で0.4歳しか年齢が進まない人もいれば2.4歳も年を取ってしまう人がいるようだ。

その原因として、老化のペースにばらつきがあるのは、人による細胞活性の差が影響していると考えられている。

人間の体は、最初1個の卵子から分裂して37兆個の細胞になり、そこで個数は増えなくなるはずであるが、DNAの損傷やコピーミスによって正常ではない細胞が生まれてしまう。このような細胞を除去する研究で2016年に、東京工業大学の大隅良典教授がノーベル生理学・医学賞を受賞している。

DNAに傷がついたら、それを修復する役割を持つのが「サーチュイン遺伝子」である。この遺伝子の活性にかかせない物質も見つかっている。マウスでは、メスが16.4%、オスが9.1%健康寿命が延びたそうだ。

世界中でオートファジーやサーチュイン遺伝子へのアプローチ以外にも、さまざまな長寿研究が行われている。サウジアラビアに本部を置く世界的な非営利団体では、「2030年までに65歳から80歳の人の3つの領域(筋肉、認知、免疫機能)を少なくとも10年分以上、回復させるような介入方法の開発に成功」すれば、莫大な賞金を得られる。

そんなに簡単なことでもないし、それが福音とも思えない。

長く生きることもさることながら、昔の映画で「短くも美しく燃え」というのがあったけれど、短いのも長いのも困る。長さはちょうどいいところ(80歳くらい)でいいので、平和で不幸でないことにお金を使ってほしいものだ。

犯罪が少なく、戦争が無く、貧しいことがないだけでいい。

それより、ヒトによって同じ365日でも生物学的年齢に差があることの理由を知りたいものだ。すくなくとも、ヒアルロン酸やコンドロイチンなどのサプリではなさそうだ。これらを販売している業者も、本当に効果があると思うのであればサウジアラビアの非営利団体のコンペにでも申し込んでみればよさそうだ。