映画「ハリエット」という奴隷解放運動と20ドル札
ハリエットは実在の女性で1820年か21年(文化文政のころ)に生まれて1913(大正2)年に亡くなっています。南部から脱出する奴隷たちを助けたり北軍に入って南軍と戦ったり、お札(さつ)になるくらいの女性だったということ。
2016年に新20ドル札の調査で堂々の1位を獲得してジャクソンを裏にしてハリエット・タブマンが表(おもて)になることとなりました。オバマ時代のことです。新20ドルは2030年に発行される予定でしたが、女性参政権100年目の節目にということで2020年に繰り上がりました。しかし、トランプが横槍を入れて凍結になってしまいました。
バイデンが登場することで復活するとのことですが、復活したのかは不明です。
アメリカで奴隷を扱った映画は結構あります。というか、最近増えている気がします。「ハリエット」「私はあなたのニグロではない」「クラウン・ハイツ/無実の投獄」、あるいは南アフリカの「マンデラの名もなき看守」「遠い夜明け」などは、振れたという程度ですがアマゾンプライムで見ました。
差別の原点には、複雑なものがあると思いますが、端的に煎じ詰めれば「優劣」に集約できそうです。肌の色が黒いか白いかは、見た目の問題ですし、文化の程度で優劣を付けることもあるでしょう。勉強の成績とか親の資産とか差別しようと思えばいくらでもネタはあります。
基本は差別をしようとするかしないかは本人の意志によるわけで、そこに明確な理由は不要です。本人の意思は価値観で構成されており、生育環境や教育や所属する集団に左右されることも少なくありません。
2015年には、欧州連合の人々の約17%がアジア人との仕事に不快感を覚え、約31%が、子供がアジア人を愛するようになると不快感を覚えたと報告
wiki
というような、結構最近の話にも登場してきます。冒頭の20ドル札にもなろうというハリエットも奴隷の時代に頭を殴られた後遺症で生涯苦しんだとのことです。
アメリカにおいて、そんな時代(南北戦争が始まる前後)であったことではありますが、ハリエットが特別な人間であったことは間違いのないことです。単に黒人と言うだけではなく、ハリエットがお札になることは大いにあるべきことですが、トランプがお札になるようなことはあってはいけないと思います。
現下、国葬問題で国論が二分していますが、何年かしてお札にしようなんてことが起きないことを祈るだけです。歴史なんていくらでも書き換えができるのが世の常ですから。
国葬でもお札でも。せめて衆目が一致する(否定のしようがない)功績と高潔さは不可欠の要素としてほしいものです。