暗黒酸素
水深4000mを超える深海で酸素が生成されていることを示唆するデータを検出したけれど、センサーの故障と考えた。
酸化鉄などが海水と組み合わさると電気を発生させることを発見しており、「深海の金属を含む鉱物が電気を生み出し、海水の電気分解によって酸素が生成されるのではないか」という仮説を立てた。
海底から集めた数ポンド(数kg)の多金属団塊(マンガン団塊)を対象に研究を始めた。多金属団塊とは、コバルト・ニッケル・銅・リチウム・マンガンといった金属が含まれており、これらの元素を取り出すことをいくつもの企業が着手している。
単一の多金属団塊が表面に最大0.95V(ボルト)の電圧を生み出すことが分かった。電気分解によって海水から酸素を生み出すには1.5Vの電圧が必要だが、これは複数の多金属団塊が直列電池のようにクラスター化すれば容易に到達できる数値である。
多金属団塊から酸素が自然発生している可能性を考え、1980年代に多金属団塊が採掘された場所を調べるとバクテリアですら回復していなかった。採掘されていない地域では海洋生物が繁栄していた。
海底に当然水がありミネラルがあり火山噴火で熱があるので、酸素があれば生物の発生も不可能ではない。
といっても、物があるだけでは自然発生的に生物が誕生するわけでもないが、シアノバクテリア以外に酸素の発生源があることが分かったことは一つの発見ではある。