2025年に「崖」があるらしい

経済産業省が2018年に発表した「DXレポート」と呼ばれる資料の中で「2025年の崖」という言葉が初めて登場した。DXが言うところのデジタルとはワードやエクセルのことにとどまらない。

今はやりの生成AIやIoTやクラウドや、おそらくロボットも含まれるだろうし、オフィスの自動化なども含まれるが、それらだけにとどまっていると大方は失敗するらしい。

経済産業省では、DXを推進しないことによる損失を12兆円になると予測している。この損失を「崖」というらしい。

COCOLで作ったシステムでは、COBOLの技術者が2025年で定年になるとのことで、その人材確保をいかに補うのか、あるいは違うシステムに移行するのかなどの問題が発生するらしい。

その「2025年の崖」を知っているかを企業の情報システム部門およびDX推進担当者を対象に調査をしたという記事があった。「知らない」が72.7%。分からない10.6%。知っているかを聞いているのに「分からない」というのも不思議な回答であるが、ようはDX関連部門担当者の8割を超える人たちに認知されていないことがわかった。

DX推進にあたって人事労務領域の優先度を聞いたら「分からない」が6割を超えていた。分からないと優先度のネガティブを足すと85%になった。つまり、85%の起業にはDXの「崖」など認知されていないということ。

逆に、優先度が高い15%の起業では「業務効率化のため」「社員のエンゲージメント向上のため」「人的資本経営を実現するため」「適切な人事配置を実現するため」などと、DXの核心に触れる回答が得られている。

デジタルをフルに駆使して、可能な限りの効率化を図ることは、組織の効率も向上するはずで、いらない役職や階層を圧縮することと並行させなければ、単なるデジタル化の推進にしかならない。

それは1企業だけのことではなく、例えばマイナンバーだって、これを導入することで、何人の人材が他の部門へ配転することが可能になるのか、病院での経済効果がそれくらいで、節税効果がこんなにありますのような説明がされていない。

要するにKPI(企業における最終目標達成までの各プロセスの達成度や評価を示す定量的な指標)を示さずに掛け声だけ声高に喚き散らしても、「欲しがりません、勝つまでは」と言いながら勝つことはなかった事例と本質は変わらない。

効率が示されていないのに、デジタル化だけが前面に出ているならDXとしては失敗事例の一つとなるだろう。