ゴールトンと双子と遺伝子

フランシス・ゴールトンといえば、人間の才能が遺伝によって受け継がれると主張した人物で、はじめて「優生学(Eugenics)」という今日、きわめて評判の悪い言葉を使い、広めたことでも知られている

フランシス・ゴールトンは、チャールズ・ダーウィンの従弟。この時点では一卵性も二卵性も識別されていなかった。それが識別されるようになってからナチス・ドイツにおいて1920~30年代くらいに分析され、人種政策に活かされる優生学の基盤となっていく。

アメリカでは1970年代以降、学問として確立されていく。

起点はゴールトンの双子の研究にあった。

アメリカでは、ソビエトに人工衛星の打ち上げで先んじられたスプートニクショックで、科学教育が重要ということになって、低所得層、マイノリティの教育の底上げが始まる。

ちょうど1970年頃、ジェンセンという心理学者が、実は知能指数IQは遺伝によって80%決まっているんだと、双子の研究で明らかにした。同時に、黒人と白人との間にはかなり大きな遺伝によるIQの差がある可能性を述べ社会的に大きな問題となった。

当然、遺伝するのは知能指数だけではなく、性格にまで及ぶことも少なくない。感情というのも、脳内の刺激に応じた化学物質の分泌に依存する部分が少なくないから、知性が働く以前の対応として十分に考えられる。

DNAを発見したワトソン博士が、「白人と黒人の知能検査では、遺伝子に起因する知性の差が出る」と述べ研究所の名誉職を剥奪されている。

それが事実か虚偽かは凡愚には識別できませんが、走らせれば短距離でも中距離でも長距離でも圧倒的に黒人が上です。歌ったり、踊ったり、楽器を演奏したりすれば圧倒的に黒人が上です。これは、環境因子ではなく、確実に遺伝的なことと思います。

だから、知能指数(動作性のIQ)に関しては有為差があるのかもしれません。しかし、IQが高い子を集めてその後の人生を継続的に調査した「ターマンの子供」という研究で、ノーベル賞受賞者は皆無。唯一、有名になった科学者が、今話題の「オッペンハイマー」くらいだった。

つまり、知能指数の高さは、世間で思うほどに文化的な価値のある指数ではないということです。せいぜい、役人にでもなって愚かな政治家に額ずいて天下り利権に浴することをもって良しとするぐらいが関の山でしかありません。

それと、フランシス・ゴールトンが提唱した「平均への回帰」という考え方がある。

スイートピーの趣旨の研究で、「子世代種子の平均直径を親の平均直径に対してプロットすると直線に近い関係がある」しかし「子の平均直径は親の直径と比較すると、より全体の平均直径に近づく傾向がある」としている。

前者への志向が強すぎるけれど、結論は親が優秀なら、それ以上に優秀になるよりは、平均に回帰していくということ。「トンビが鷹を生む」とは言うけれど、それは単に制度において親が「トンビ」と決めつけられていただけで、潜在的には「タカ」だった可能性は排除できない。

知能指数が遺伝する可能性があるとしても、創造的な才能や運動的な才能が遺伝するようには思えない。やはり、平均へ回帰しているからなのだと思う。

そして、間違いなく継承できるのが「資産」と「権力」で、これらを受け継ぐために、才能はいささかも必要とされていない。