「ラピダス」という半導体メーカーの勝算

ラピダスとは「Rapidus」と書き、「早い」という意味だとか。ラテン語だそうです。かつては、西洋発の言葉を漢字に置き換えるのに有数の知性が使われてきましたが、いまや、ITや半導体などの先端的な技術の世界においてはカタカナがのさばっています。

半導体を生産する企業は「ファウンドリ(foundry)」と呼ぶのだそうです。「foundry」の原義は「鋳造所」だそうで、なぜ半導体製造が鋳造なのかは今のところは不明ですが、アチラから「そうだ」と言われればコチラは「仰せの通り」というしかないのはイニシアチブ(主導権)がないからにすぎません。

で、ファウンドリは中国、台湾、韓国に集中しており、汎用品の半導体は、この度の中国におけるゼロコロナで品不足となってしまいました。そもそも台湾も韓国も「中国」という地政学的リスクがあるのでアメリカは国内回帰をもくろんだはずですが、天下のIBMが日本の「ラピダス」とタイアップするとのことです。

その背景(下心)も調べなければ軽々にうなづけそうな話でもありません。

経済産業省は「ロジック半導体」の自国内生産の必要性によりファウンドリ企業を国内に作ろうということですが、先端ロジック半導体生産において日本は大幅な後進国であり、そのギャップをどうやって埋めるのかは未知数です。

半導体は「メモリ」と「ロジック」に分けることができるのだそうです。今回、ラピダスで生産しようとしているのは「ロジック半導体」の方です。なぜ、この時期にいきなり10年以上も遅れているこの分野に、新たな企業を国策で作ろうとしているのかというと、ロジック半導体の構造が大きく変わろうとしているからのようです。

つまり、構造が変わるならばスタートラインは同じということになると経済産業省で考えたという意見があります。

半導体製造装置はアメリカから輸入して立ち上げるようですが、あくまでも試作機のようなもので、量産体制は日本で開発しなければならないようです。

ちなみにTSMCの熊本工場では日本が6千億円を助成することで成立しているようですが、この製造工場からは先端技術を頂くわけにはいきません。なぜなら2ナノからは程遠い旧世代型の半導体製造工場のようですから。

それに比して2ナノという最先端の半導体製造に関して国は700億円を助成するとのことですがTSMCの製造工場に比べると桁が1つ少ないようです。量産するとなると推定でも5兆円、あるいはその倍くらいかかる可能性があります。

とはいえ、メリットも多そうで、AI半導体のような設計・製造において、先進性を発揮するスタートアップ企業がたくさん出てくるような時代が幕を開けるかもしれないので、まずは期待しておきたいです。

今後の展開は2nmから先の技術開発として「3D」化になっていくと予測されていますが、それも2nmの先の技術なのでチャレンジすることは無駄ではないでしょう。

最大の問題は量産工場の為の資金をどこが賄うのかということと、経営陣が昭和臭を感じさせるご老体であることが気にかかります。

2000年早々から過去に何度か半導体生産にチャレンジしたようですが「円高」で成就できなかったようです。いまは「円安」で、今後も大幅な「円高」になることは予想できないので、為替的には以前よりは有利ではあるようです。

仮に失敗であっても、オリンピックや防衛に膨大なお金をばらまくよりは、先端技術にお金を投じるほうがちょっとはましな気がします。