宇宙が膨張する速さ

約138億年前に誕生して以来、宇宙はあらゆる方向へ膨張を続けている。

ハッブルルメートルの法則における、宇宙の現在の膨張率を表す定数銀河までの距離rMpcメガパーセク)、後退速度vkm/s)とすると、ハッブルルメートルの法則vH0rで表され、その比例係数H0がハッブル定数となる。単位はkm/s/Mpc。また、H0逆数ハッブル時間、ハッブル時間に光速度を乗じた値をハッブル距離とよび、それぞれ現在の宇宙の年齢と宇宙の地平線の大きさの目安となる。

現在の宇宙の膨張速度を分析することにより、研究者らは宇宙の年齢を推定できる。

ハッブル定数を測定するうえで研究者が用いる方法は主に2つある。一つは、その性質をよく知っていて地球から比較的近い天体を利用し、それらがどの程度の速さでわれわれから遠ざかっているかを推定するというやり方。

もうひとつは、ビッグバンの名残である「宇宙マイクロ波背景放射(CMB)」を調べて、宇宙が初期以来どれだけの速さで膨張してきたのかを推定する方法。

ところが、この二つから、相反する結果が得られている。

一つ目の方法では約73キロメートル毎秒毎メガパーセクという速度で膨張しており、二つ目の方法では67.4キロメートル毎秒毎メガパーセクで膨張していることになる。

ウェッブ望遠鏡がハッブル宇宙望遠鏡の3倍の精度向上をしているとのこと。一つ目の方法でウェッブ望遠鏡を使ってもハッブル宇宙望遠鏡をつかっても観測結果はほぼ一致していた。

測定の不正確さよりさらに根本的なものである可能性を示唆している。もしどちらの数値も正しいのであれば、天文学者は、宇宙がどのように成長してきたかについて、何かを見逃していることになる。

考えられる説明のひとつは、「われわれが使っている重力理論、つまり一般相対性理論に問題がある」というものになるようだ。

あるいは、予想されていなかった形のダークエネルギーが、初期宇宙に存在していたのかもしれない。

2017年、科学者らは、中性子星同士の衝突から生じる重力波を検出した。中性子星同士の衝突から生じる重力波を用いた予備的な研究結果は、ハッブル定数が約70キロメートル毎秒毎メガパーセクであることを示唆していた。