心はどこにあるのか?
「自分としての意識」は、恐らく脳にあると答える。しかし、「心」はどこに有るかと問われれば、マインドとかハートというがごとくで、胸のあたりと思う人が多いような気がする。
例えば、人を好きになると、その人と会えば心臓がドキドキするのも「心」の作用だ。
つまり、「心」とは、知覚や意識の総称ではなく、そのうちの「愛情」とか「正義」のような、観念とか感情に基づいていると認識されている。
脳にある神経細胞は千数百億個あると言われている。神経細胞同士はシナプスで繋がっており、脳全体で1000兆個ほど有るとされている。
ゲノムは4種類の塩基による30億個のコードでしかない。アデニン(A)、チミン(T)、グアニン(G)、シトシン(C)の4種類の塩基でプロットされている。アデニンとチミン、グアニンとシトシンがそれぞれ対応して結合する。
アミノ酸は20種類しかないが、アミノ酸がさまざまな形で結合したタンパク質は10万種類以上有ると言われており、そのタンパク質を作る指令を出しているのが遺伝子である。
ヒトゲノムの塩基対は30億個。直線に伸ばすと2メートル。このヒモが60兆個の細胞全てに入っている。実際には23対の染色体として分断されて格納されている。
「心」の話に戻ると、ドキドキしたりするのは心臓の動きとか内分泌の作用であるのだけれど、それを司っているのは、実は「脳」であるゆえに、心の実態は脳の中にあるといえる。と、一般的には言われるが、実際には迷走神経が体中に張り巡らされており、感情の全てを脳が司令しているとも言えない。
個体の差をゲノムから見ると、30億の塩基のコードで、個人間で違いが見つかるものと、人間に共通のものがある。
個人間で違いのある部分を「多型」といい、0.1%から0.3%有るとされている。0.1%とすると300万対に個人の差が書かれていることになる。この多型を「スニップ」という。これが、個の特徴を発言させているが、残りの殆どが人間という生物の種を固定している。
マウスの遺伝子の8割以上は脳で発現している。そのうちの一つの遺伝子を操作しても何らかの影響が出てくる。つまり、ゲノムの上に存在する遺伝子の多くは、脳の中で何らかの役割を担っていて、「心」の何かに影響を与えていることが推察される。
死後の人間のゲノムを採取してデータベースにしている会社がある。そのゲノムを分析した結果、統合失調症で26の遺伝子に有意な差異がみられた。
心はどこにあって、意識や知能はどのように形成されているのかなどは、明確な解明までには至っていない。脳で形成されているとして、遺伝子との関連もまだまだ未解明。
いえることは、1つの機能と思われる機能は、数多くの遺伝子と、数多くのニューロンと、数多くのシナプスで形成され、脳の中では多数決によって決めているらしい、つまりは「自己」が独裁によって自分の全てを決めているわけではなく、民主的に自己を形成している。
よって、一部のニューロンが欠損しても、多くの場合は他のニューロンがカバーするように作られている。