スペイン風邪の復習
1918年(大正7)から翌年にかけて猛威を奮ったスペイン風邪で世界では4千万人、日本でも39万人が犠牲になった。
単なるインフルエンザではなく人間の免疫が対抗できなかった毒性と感染力の謎を解明する必要があった。
種の壁
鳥や豚に罹患する病原体はヒトには感染しないのが原則である。
インフルエンザの宿主は「鴨」などの水鳥で体調を崩すことはない。ニワトリなどに罹患すると下痢をしたり呼吸系を痛めるが死に至るほどではない。
ところが、豚を介在すると種の壁を超えることがある。豚がヒトのインフルエンザを罹患しており、その豚に鳥のインフルエンザが交じることでインフルエンザのDNAが未知の変化を遂げることがある。
1997年アジアで発生した鳥インフルエンザはスペイン風邪を超える致死率であった。
つまり豚の体内で2種のウイルスがダイナミックに混じり合って変化を起こし、その豚のウイルスを蚊などが媒介してヒトに感染する。
病原菌とウイルス
病原菌の大きさは 0.5ミクロンから数ミクロン 1ミクロンは千分の1ミリ
ウイルスの大きさは 数十ナノから数百ナノ 1ナノは百万分の1ミリ
インフルエンザウイルスはRNAウイルスで、DNAに比べてRNAはコピーミスが起こりやすい。それが、インフルエンザの多様性につながっている。
アラスカで死亡したエスキモーの死体を掘り起こしてスペイン風邪のウイルスを入手し、インシュリンを作る手法を利用してスペイン風邪のウイルスを復元した。
そのウイルスから1999年にウィスコンシン大学の河岡義裕が解析し、ウイルスのアミノ酸で2箇所が通常のインフルエンザウイルスと異なっていることを発見し、そのことが強毒性につながっていると推理した。
そのウイルスをカニクイ猿に感染させると、インターフェロンが抑制され、インターロイキン6が過剰に分泌されていた。スペイン風邪の猛毒性は、自然免疫が抑制されることによることがわかった。
ちなみに、「インターロイキン6」とは炎症に関与するサイトカインの一種であり、リウマチを起こしたりする。善と悪の両面を持ってる。