近親交配を回避する仕組み
近親交配を回避する受粉の新たな仕組みを解明したという2010年の記事があった。奈良先端科学技術大学院大学バイオサイエンス研究科細胞間情報学の研究で、ナス科植物のペチュニアが、動物の免疫系によく似た多種類のタンパク質を動員する形の非自己認識システムを利用して近親交配を回避していることを、世界で初めて明らかにした。
アブラナ科やケシ科などの植物では、雌しべに届いた花粉が自己の遺伝情報によ るタンパク質を持っているかどうかを認識する独自の仕組みを進化させていることがわかってきた。難しい話は省略して、雌しべにある毒性タンパク質が非自己の花粉に対して解毒するたんぱく質を作っていたということのようだ。
個体数が減少してくると遺伝子は多様性を失うようになってくることで、突然変異による弱有害遺伝子が蓄積されてきてホモ結合(劣と劣が固定される)されることが致命的になることが予想される。
ライオンは、メスがコミュニティを作り、交配するときにオスを入れるが、生まれた子が生殖可能になるころにオスをグループから排除するという。チンパンジーは、生殖可能になったメスは他のコミュニティから入る。そのメスを生殖可能なオスが交配するので生まれる子の父は不明になるが、生まれたメスの子は生殖可能になるとコミュニティを出て、他のコミュニティに移る。
それは近親交配を回避するためだとまことしやかに言うし、はては「本能」だとも言うけれど、では遺伝子に書き込まれているのかと言えば、そんなはずはない。
そこでどうしても知りたいのが、そのような近親交配排除の根源的理由である。人間は「道徳」があって、それで禁じている。遺伝的に近いと遺伝子に異常が発生するなどという理屈は「遺伝子」が見つかる前には通らない理屈である。なぜ、それが道徳的に禁止にしたのかが不明である。
日本では927年に完成された延喜式で、国つ罪として母及び子との近親相姦が禁止された。近代日本では1873年6月13日に制定された改定律例においては親族相姦の規定があったが、1881年をもって廃止された。現在の日本では、成人の近親者同士の合意に基づく性的関係についての刑罰規定は存在しない。
「遺伝病や遺伝子的な欠陥が継承されるリスク」をデメリットに、「より効率的に遺伝子を残したり、交尾の機会を増やしたりできること」をメリットに設定して、それぞれを定量化してコンピューター上でシミュレーションしたら、生息環境やそこに住む個体数といった要素を加味しても、「近親交配を容認するモデル」が最も成功に近い戦略だということが分かったそうだ。
なにをもって「最も成功に近い戦略」としているのかは、単に数だけなのか、環境適応においてなのかも分からない。近親交配を許している動植物種と、許していない種の比較まで調べて公表してほしい。
同様に不思議なこととして「男系男子」という考え方である。これはY染色体によって系統を1つだけに守ることができるとする考え方であるが、それとて、染色体が見つかったのは1842年だとされている。ちなみに皇室典範を決めたは1889年のことだったそうだ。
1889(明治22)年に「男系男子継承」を明記した「大日本帝国憲法」と「皇室典範」(旧)が登場するまで、日本の歴史で「皇位の継承者を男系の男子に限る」とされた文書は作られていない。
つまり、「男系男子」という考え方には遺伝や染色体という考え方ではなく、考え出されているとするなら、考え方だけの合理性だといえる。