生命活動の発動スイッチ

海底下の微生物であっても、遺伝子のミスコピーが起きることで地上のように進化しているかというと、そうはなっていない。そもそも微生物はあまり増えないのと、細胞分裂の回数も地上と比べて大きく減少していることもあるので、思う程には進化しているとは思えない。

さらには、栄養源が少ないこともある。

とはいえ、微生物は陸地は6×10の29乗いるとされるのに対し、海底下は、4.5×10の29乗だとされている。陸地6に対して海底下は4.5なので、すごく大きな生物圏が海底下にある。

海洋には、1×10の29乗とされているので、海底下の生物圏は海洋よりも大きい。

「自己複製する」ことが生物の条件のひとつとしているが、もしかしたら永遠に分裂することなく生き続ける微生物がいたとしたら、それを「生命」と呼べるのかどうか、わからない。定義からすれば「生命」とはいえなくなる。

DNA自体は合成できる。合成したDNAと部品を集めて人工的に細胞をつくったとしても、どうすればそれが生物として動き出すのかわかららない。ただの物質に、一体どういうスイッチを入れると「生命」となって活動するのかが分からない。

海底下の微生物のゲノムは、深くなるほどゲノムのサイズが小さくなっていく。生存に必要な最低限のゲノムサイズに適応していると考えられる。

数千万年前の泥が海底火山によって古い地層から噴き出してくることがある。その堆積物の中に微生物のDNAを見つけることがある。そうした微生物は、栄養が豊富な新たな堆積層で増殖できるかというと、どうも環境適応ができない公算が高い。

生命の定義は「1.外界と膜で仕切られている」「2.代謝(物質やエネルギーの流れ)を行う」「3.自分の複製を作る」の3要素である。この3要素である限り、それは生命体とされる。

海底下であっても、地上であっても生命としての原理は同じである。今から億年という時間の経過で、何が起きるかは不明であるが地球の生命体としては、まだまだ数億、数十億年は生存可能と思われる。

どうすれば、この3要素がそろい、さらに生命としてのスイッチが入るのかを、自分が生きているうちに極めてもらいたいものだ。