BPMという略語

Business Process Management」の頭の文字だけ拾ったのが「BPM」だそうだ。

「業務プロセスを可視化して問題点を見つけ、最適な形へと改善していくことで、業務効率化やコスト削減、属人化の解消などを実現することを目的としている」と説明されている。

M&Aやグローバル企業などにおいて有効な手法なのかもしれないけれど、日本の組織風土で定着するようにも思えない。

「経営戦略やビジネスモデルを現場レベルに落とし込んだ結果、現場の社員はどのように仕事をするべきか『標準プロセス』という目に見える形のフローとして定義し、これを普及・展開し、順守状況を評価する」

このように「標準」という考え方があるため、マニュアルの有効性と活用性があり、雇用における職務内容の定義文書である「Job Description」によって人材を募集し、契約するという循環を前提とすることができる。

職務の標準化もしておらず、マニュアルも、JDも整備されていないでも日本企業が存立してこれたのは、実は就業者の善意とやる気で機能してきた面を否定できない。

そもそも、それなりに大きな企業の経営トップが、どれだけの経営戦略があり、ビジョンを持っているのかが、まずわからない。ここを可視化できなければ、その先もない。逆に言えば「標準プロセス」に落とし込むことができるのであれば、それは単に実行しレビューすればいいだけのことで、そこから先のマネジメントはいくらでもやりようがある。

どう考えても、今までの日本の組織風土にはなじまないやり方である。というのは、それぞれの職務をこなしている就業者には、それなりの工夫とノウハウがあり、それを支えているのが熟練でもある。それらが総括されて業務として円滑に推進されていて、かなりの部分が、就業者の善意ややる気に依存しているゆえに、明文化もできないし、必要としてこなかった。

業務には、それなりに統括する課長やら部長やらが階級職として存在しているものの、実際の職務を円滑にこなせるわけではない。

これらがすべて「標準プロセス」で回るのであれば、自動化やAI化は時間の問題となる。

つまり、「BPM]のような言葉が躍る背景には「RPARobotic Process Automation)」の登場が背景にある。RPAが得意にするのは「標準プロセス」だからである。標準プロセスとしての職務が山のようにあるのであれば、RPAなら24時間、文句も言わず黙々とコンピュータが処理をしてくれる。

BPMで職務プロセスを標準化し、それをRPAというソフトでこなしていくだけで企業の経費は削減できる部分もあるとは思うものの、なぜ、そういう発想になるのかを辿っていくと、海外での就業環境における人材の流動化に行きつく。

日本では、いったん雇用すれば自己都合でやめない限り、流動しないことが原則になる。それなら、職務遂行を任せておけば、能率も効率も考えて動かしてくれるから、なまじ、BPMやRPAのようなITツールを導入し、職務プロセスをIT化するための仕様定義などに書けるコストは、相対的に見合わないし、職務プロセスは環境の変化に応じて随時変えていくことも面倒なことである。

RPAやAIで人手不足の一助となる可能性を示唆するものの、そもそも職務プロセスが標準化されていないことが多すぎて、思うようなコストカットに名なりにくいうえに、非正規者社員以外は、解雇することも難しい。

そんな点からしても、「BPM」も「RPA」も、日本流のITツールとするためには、経営幹部の入れ替えから始めなければ効果を出すことは難しい。