不本意未婚

昨今の婚姻数の減少および婚姻数の減少に伴う出生数の減少は、まるで若者の価値観が変遷したことが原因かのように言うことも少なくない。

出生動向基本調査が経年で調査している若者の「一生結婚しない」という割合は年々増えていることは事実である。

未婚男女の「恋愛結婚による結婚限界年齢」は男性40.0歳、女性37.6歳であることから、対象年齢を20~39歳で集計してみると、「一生結婚しない」割合は、男性は1992年の5%から2021年では20%へと4倍になった。女性も、1992年の6%から2021年は17%へと3倍に増えている。

1992年から2021年までの数字を分析すると「結婚前向き派」は男性で41~44%。女性で49~54%。「一生結婚しない派」は男女ともに数%から17~20%に増加しているが、「結婚後ろ向き派」は減少している。

「一生結婚しない派」は男女ともに、2010年ころから増加傾向になっているが、それは、意識の問題より何らかの原因によってハードルが上がったと考えるべきである。「一生結婚しない派」がここへきて急に増えだしているのは、「結婚できない」という不本意未婚が増えている可能性が高い。

結婚に前向きであろうがなかろうが、1990年代では男性の8割、女性のほぼ10割が結婚していた。これが2010年代から6割を切るようになっている。

これに年収を組み合わせてみると、結婚前向き派の年収のピークが200万~500万にあり、500万を超えると既婚のピークがある。

前向き、既婚を除く年収の層を見ると200万~300万あたりにピークがある。

特に男性に顕著であるが、年収500万円未満の層だけが、「結婚したいのに未婚のまま」となっていることが分かってきた。逆に500万以上の層は結婚願望がさほど強くなくても既婚となっているケースが多い。

SMBCコンシューマーファイナンス株式会社が定期的に実施している「20代の金銭感覚についての意識調査」で「結婚しようと思える世帯年収はいくらか?」問質問に対して、2014年の中央値は379万円だったものが、2024年では544万円になっていた。わずか10年で165万円の意識差に変化している。

既婚者の産む子供の数には変化がない。人口の自然減の原因は婚姻の減少にあることは間違いがない。年収だけの問題ではないとはいうけれど、将来への希望として年収は大きな要因となる。

「労働の流動性」などというけれど、高度な人材においては転職は報酬アップにつながるが、大多数の労働者にとっての流動性とは「非正規」でしかなく、流動する都度に報酬ダウンにつながりかねないのが日本の労働環境であり、労働慣習でもある。

熊本にTSMSがきたことで、地価は高騰するし時給単価は上昇している。いずれ、出生率も婚姻率も上昇するだろう。結婚に対する意識が変わったのではなく、未婚者の将来不安や所得不安が結婚に対する価値観を変容させている部分が大きいことは確実である。

いまだに、「元政権枢要なお爺さん」や上場企業経営陣が中国詣でをしているようでは、大工場の国内回帰もしようとはしないのだろうけれど、本腰を入れて製造業の国内回帰をしなければ、人口減少のみならず経済も衰退の一途をたどる。

しかし、そんな政権与党を選んでいるのは有権者である。

かつての「民主党」の大罪も無視できないにもかかわらず、かつての「民主党」で役職に就いた懲りない連中が党首選に厚顔にも出てくる神経は自民党議員同様に厚顔というか、「民主党」という日本の民主主義を100年遅らせた大罪を認識していない証左だ。