東京一極集中

東京の人口増加の86%が20代だそうだ。ということは、20代の若者は、なぜ、故郷を捨てて東京に来るのだろうか。

人口の増減については「自然増」と「社会増」という言葉がある。自然増は、出産。社会増とは厳密には「転入―転出によって増えた数」を意味する。

東京への転入超過人口の移動前住所地を見ると、大阪、愛知、兵庫、福岡、静岡、北海道あたりから女性が2千人以上東京に転入している。神奈川、埼玉、千葉を除く43道府県で7万人以上が東京に吸い取られている。

特に大阪、愛知で1万5千人を超えている。東京20代の人口増の2割は大阪、愛知の貢献による。

大阪府、愛知県、兵庫県、福岡県、静岡県、北海道、宮城県、広島県の8道府県で半数を超える。20代で調べているので、大学や専門学校となると10代が吸い取られることになる。

20代が東京に流入している多くの理由は「雇用」。

これは、単に賃金だけの問題ではない。大げさに言えば、若者に選ばれる理由に「都会」という「ニオイ」に吸い寄せられている。

この東京圏集中の社会増は当分続くことは必至である。なぜなら、人口減少は人口の少ないエリアから強烈に転出がはじまるからである。人口が5万あたりを割り込めば商店も賑わいを失い、大病院は経営が困難になる。当然、若者に希望を与えられなくなってくる。

5万都市の周辺人口も、過疎化が始まると水道・電気・ガスの維持が高コストになっていくし、新聞や宅配も高コストになっていく。

国会をいずれかに移せば官庁も自ずから移ることになるけれど、総理候補は誰もそんなことを言わない。その費用は千代田区界隈の国有地を売ればいい。

熊本にTSMCが来たことであれだけの賑わいと人口社会増が見込めるならば、人口減少エリアは積極的に税制優遇などをしてでも大工場、大企業を誘致するような施策を打つべきと思う。トヨタと日産が福岡にEV用の電池工場を作るらしいけれど、こういうのを過疎化している地域に誘致する知恵が必要である。そのための自治体としての政治性が必要になる。

地方に仕事があれば若者も定着し、自ずから人口も増えるはず。人口減少とは社会が変わったとか価値観が変わったとか言うけれど、安定的な仕事があれば、好き好んで東京に転出する必要もないと思う。

「社会増」に対しての歯止めを各自治体として議論すべき。最も求めなければならないのは「自然増」であるが、これは価値観の変容を伴うので、よほど政治家がしっかり取り組まなければ効果は出ないが、こうしたことにこそ、国政政治の大きな役割があるはず。

「価値観が変わった」「先進国でも人口減少」などというものの「若い」ということは時間があることでもある。それを軽々に「可能性」と言えなくなっている現代に希望を見出せなくなっている。

「正規雇用」「終身雇用」が確保されていたから昭和は繁栄できた。「非正規雇用」「ジョブ型雇用」「雇用の流動化」などという経営側にとって都合のいい言葉を労働側が受け入れる前提は「ベーシック・インカム」を検討すべきかもしれない。

しかし、終身雇用」「年功序列」を金科玉条にしている先進国は日本だけのようだが「解雇規制」を緩和せざるを得ないだろうけれど、手厚いセイフティネットの用意もなく法改正は治安を悪くする。何をやるにしても、政治は常に手遅れになるのは「選挙」対策に縛られるからだ。

東大出ようが、ハーバード出ようが、今の選挙の仕組みでは、痛みを伴う改革などできるはずもない。