非必須栄養素
「非必須アミノ酸」とは、タンパク質を構成する20種類のアミノ酸のうち、体内で合成できるアミノ酸のことだそうだ。対する必須アミノ酸は体内で作ることができない。
非必須アミノ酸は体内で作られるため、あまり深く研究がされてこなかった。理化学研究所では、非必須アミノ酸を一つずつ欠乏させたショウジョウバエの餌を作って影響を調べてみた。
その結果、「チロシン」の欠乏が寿命や代謝整理に関わることを発見したとのこと。
食環境はヒトの健康寿命に大きな影響を及ぼが、食事量を制限すること(腹八分目)により健康寿命を延長できることが明らかとなっているくらいしかわかっていない。
非必須アミノ酸が欠乏しても個体の栄養不良は誘発されないため、タンパク質の摂取制限による効果の多くは、必須アミノ酸の不足によるものと考えられがち。
必須アミノ酸を欠乏させると寿命が短縮したが、多くの非必須アミノ酸を欠乏させても寿命にはほとんど影響しなかった。チロシンを欠乏させた餌では、寿命が延長することがわかった。
タンパク質制限により寿命が延長したメス個体では、産卵数が低下する。チロシンを欠乏させたショウジョウバエでも、産卵数の低下やタンパク質摂食の増加が認められ、典型的なタンパク質制限様の応答が起こっている。
チロシンのみが低下したことによって、タンパク質全体の不足と同様の生体応答が引き起こされていることが分かった。チロシン制限による寿命延長については、特にインスリン/IGFシグナルの影響が大きいことも明らかになった。
アスパラギン、セリン、チロシンの3つの非必須アミノ酸は、生体内での合成のみではその量が十分維持できないことを意味する。しかし、以上の結果は生殖能力のあるメスの成虫でのことで、産卵不全のメスや正常なオスの成虫では影響がほとんど見られなかった。
タンパク質は健康維持に重要な栄養であるけれど、一定以上の摂取制限は逆効果になる。特に必須アミノ酸は、欠乏によって栄養不良になってしまう。
非必須アミノ酸の摂取制限は、餌からの摂食量を低下させた場合にも生体内で合成されるため、副作用が少ない寿命延長法として現実的に利用することが可能かもしれないが、確定的なことは言えない。