イワン・イリッチの死
この小説の作者とタイトルが分からなくて「ロシアの小説で、主人公は検事で、出世競争の中で裁判官を目指している。しかし、脚立から落ちた影響で重篤な病にり患する。家族は面倒を見てくれないが下男が嫌な顔一つしないで下の世話までしてくれる。そんな環境の中で自分の人生を見つめ直すというような小説の作者と題を教えてください」とAIに聞いてみた。
geminiの答えは、「残念ながら、ご提示いただいた情報だけでは、特定の小説を絞り込むのは困難です」だった。そこで、ChatGPTに相談してみた。
あなたが言及しているのは、ロシアの作家レフ・トルストイの小説『イワン・イリイチの死』(Смерть Ивана Ильича)だと思われます。
この作品の主人公であるイワン・イリイチは、法曹界で成功を目指す検事であり、順調なキャリアを築いていました。しかし、家の装飾中に脚立から落ちたことが原因で重篤な病にかかります。この病により、彼は人生の意義やこれまでの生き方を深く見つめ直すことになります。家族は彼の看病にほとんど関心を持たず、冷淡な態度を取る一方、下男のゲラシムだけが心を込めて彼の世話をし、イワンに深い安らぎを与えます。
『イワン・イリイチの死』は、人間の死とその意味、人生の虚無感、そして真実の生き方を描いた哲学的で深い内容の小説です。
と返ってきた。
ドストエフスキーだと思っていたので見つからなかった。作者はトルストイだった。
ChatGPTがいうように、「彼は人生の意義やこれまでの生き方を深く見つめ直すことになります」。このことが、フォンテーヌの寓話で『裁判官と病院長と隠者』の話で使われている「すべての道はローマに通じる」で言わんとしていることでもある。
「自分を知ること、学ぶこと、これこそが至高の神がすべての人間に命じている第一の責務だ」という。その上として、「大勢の人に紛れれば自分を知ることはできない」「静けさに満ちたところでしか自分を知ることはできない」のだけれど、立身出世をしていく過程で、「自分」が変節変容してしまう故に、気づきがなくなる。
栄達を遂げれば、それはそれで「いい人生だった」と納得ができることでもある。イワンも、栄達の過程にあり、かつ出世欲も旺盛だったが、たまたま重篤な病に罹患することで自分自身を内省する機会を得た。
さて、病を得ることなく栄達を遂げるイワンと、病を得てしまったことで人生の意義やこれまでの生き方を深く見つめ直すことになったイワンと、どちらが死の直前に「よい人生」だったと実感できるのかは、分からない。
なぜなら、人生のトトリ道は一本道でしかないからである。転落しようが栄達しようが「あの時、ああすれば」は思惟でしかなく、事実は単に「現在」のあるがままでしかない。
イワンは死の直前に、内省できたことで死の恐怖から解放されることになる。それは、「神がすべての人間に命じている第一の責務」を果たすことができたからなのか、はたまた、悟りの境地で死を迎えることが意義ある人生だったのかは、これまたわからない。
自分が気付くこともなく意識が混濁して自己の人生を振り返ることなどもなく存在を無にしていくことが大方の事実でしかない。
いえることは、この件に関して言うならgeminiより、ChatGPTの御宣託が、自分の誤った記憶(ドストエフスキーではなくトルストイであったこと)を糺してくれてすっきりすることができたということだ。