日本の衰退

戦後の日本
農地改革や財閥解体、公職追放などによって、地主や株主は権力を失った。インフレになり、カネの価値が相対的に下がっていくとなると原資は「労働力」しかなくなっていった。
労働力に価値があるなら、働きさえすれば給料は上がる。労働力こそが企業にとっての「資源」になる。インフレ下では希少資源であるヒトを集めて最大限活用することから価値の創造が成功する。
それらが高じて1980年代に総合GDPがアメリカに次いで世界第2位、一人当たりGDPもスイスに次いで世界第2位になった。
凋落の開始
戦争の一因ともなった通貨の切り下げ競争への反省から、金本位制に回帰した。金本位制といっても基軸通貨のドルだけが金との交換比率を固定し、各国の通貨はドルとレートを固定する金・ドル本位制と呼ばれる制度だった。
ところが、次第に米国の金準備は減少し、海外各国が保有するドルの方が多くなっていく。各国の要請に応じてドルを金と交換することができなくなったため、ニクソン米大統領は1971年8月15日、交換停止を発表した。
ドルの価値は1ドル=360円から308円に切り下げられたが、それも続けられずに1973年から変動相場に変更することとなる。
デフレの始まり
貨幣の価値が上がればデフレになる。しかも、1980年から40年間にわたって通貨の価値が上がり続けた。
その背景の一つとして「中国」という低賃金国で巨大人口を持つ国が、突如として出現してきた。円は高い。日本で生産すれば労働者に「円」を払わなければならない。
中国に拠点を移して、中国の労働者に働いてもらえば「円」を使わないで済むし、その儲けでアメリカ株を買えば資本生産性を上げることができる。
対外純資産
日本は33年連続で対外純資産額世界1位。国外に持っている資産と負債を差し引きすると資産が400兆円以上ある。
翻ってアメリカは対外純負債2000兆円。これでトランプは、本気で腹を立てている。
日本企業は、海外に投資するだけで、国内で価値を創るという仕事を重視しなくなった。日本で「生産をしない」のだから「国内総生産」=GDPが下がるのは当たり前。
政治は、経済界を指導するだけの力を持ち得ていないことを露呈している。
価値創造への無策
企業は「希少資源(労働力)を持つから勝てる」はずだったのを、資源を「カネ」としたことから急速に価値創造ができなくなる。
価値創造は「ヒト」でしかできない。「ヒト」と「開発」と「研究」に投資しなければ価値創造はできない。
円安になれば「ヒト」が貴重資源となるかと言えば、そういう時代ではなくなっている。まして、人口が減少していく社会において「ヒト」は「労働者」である以前に「消費者」でなければ、経済は回らない。
凋落の原因
労働生産から資本生産に切り替えたこと
グローバリズムと称して生産を中国に移したこと
企業価値を株価に重きを置いたこと
決め手はない!
国家は、年貢(税金)が無ければ回らない。年貢を取り立てれば国民経済は疲弊する。疲弊すれば消費が落ち込む。消費が落ち込めば増税するという循環から離脱する決め手に欠けている。
つまり、政治に「策」が無かった と責任転嫁をしてもしかたがない。
ただし、この状況は誰がやっても「手遅れ(人口減少、地方衰退)」らしい。立ち直りには、うまくいっても今から優に100年以上はかかるようだ。
価値創造だの貴重資源だの技術開発だののような難しい話ではなく、単に「人口」の問題だけに集約することができるだろう。人口が減少するから「衰退」するのであって、なおかつ、「衰退」するから人口が減少することでもある。
トランプの考えるような製造業の国内回帰などは、パフォーマンスでしかない。製造業ではない、そして国家として潤うような産業喪失に全力を挙げて取り組むことが、喫緊の課題と思うのだけれど、日本国が「再生」する「道」は、どこにつながっているのやら。