中学時代の話《その4》

堀口が与野に引っ越したので、日野と1回行ってみようということになりました。

「とりあえず午前に出れば夕方には着くだろう」といういい加減な話で習志野から与野を自転車で目指すことになりました。

電話番号も聞かず、正確な住所も聞かず、駅の名前だけを頼りに自転車をこいでいきました。当時、まだ16号線が工事中で部分開通程度でした。

「与野」といっても、今の与野ではなくて、なんだかローカル線の駅で、もちろん高架などではなかったです。まわりは、どんどん暗くなってきて、道に人は歩いていないからどこにいるのかも聞くことができず、ともかく、自転車をこぎまくりました。

約束した駅(名前は憶えていないが田舎の駅のようでした)に着いたのが23時ころ。

もういないだろうと思ってホームを覗いたら、堀口そっくりの人が独りでイスに座って本読んでいました。堀口の兄貴でした。家族総出で1時間交代で駅で待っててくれたのだそうです。

堀口の家に行って夕ご飯食べて風呂入って寝て、翌日、また自転車こいで習志野まで帰りました。

昭和40年。戦争に負けて20年。オリンピックもやって、そんな「エンタメな時代」だったということでした。