DXの効果が全然出ないのは
大手企業のうち少なくとも6割から7割の企業が、全社的にDXに取り組んでいるらしい。
その結果として、満足のいく効果を享受できている企業は1割強にとどまっているという報告もある。
DXで狙う効果は「攻め」か「守り」かになる。「攻め」のDXに関しては、DXなどと言う言葉が流布され、流行する以前からアメリカでは盛んにおこなわれていた。
アメリカは国土が広いこともあって、攻めるためには「戦略」抜きには動けないし、日本みたいに役員会で決めて各事業部長が持ち帰って関係部署の管理職に伝えて、そこからグループ長などに伝達し、やっと末端が動くような流ちょうなことはしていられない。
その昔、アメリカの部材メーカーの名刺管理に関するアプリに関わったことがある。日本でビッグサイトのようなところでフェアをやる。そこで日本各地の支店から招待した顧客がどれくらい来たのか、リスト外からどれくらい来たのかを交換した名刺を入力して地域ごとに分類する。
分類されたデータを分割して各支店に送る。そのリストに基づいて各支店では見込み(プロスペクト)ユーザーに接点を持ち、その反応や商談・購入見込みのレベルを判定して本社に返す。
それを集計してフェアにかけた費用と見込み売上額を評価する というような仕組みだった。もう、20年近く前の事だった。
見込みもないのに、突然売り上げになるようなことはめったにない。
「CRM」などと言う言葉も1990年代にアメリカからきた言葉のようだ。インターネットの世界では、KPIだとかテクニカルマーケティングだとか朝から晩まで数値管理で、未来ある若者の知恵と能力を絞りつくして、ノーアイデアになると放逐するような、「投資対効果」を極限で行っている。
漆という木がある。漆という樹液を取る。少しずつとることで、長く漆の樹から漆の樹液を取ることができ、取れた漆も良質である。これを、渡りの漆掻き職人は一気に多くの樹液を取ろうとする。それを「掻き殺し」という。ネットマーケティングなども、どこか若者の未来を「掻き殺し」しているような気がする。
DXに話を戻すと、DXというと、基幹システムとの連携のような大掛かりな仕組みとして捉えようとする傾向も感じられるが、システム変えるだけで「変容」が完結するはずもない。
「守り」のDXは、RPAの導入や、そのちょっと前には全文検索システムに構文解析のようなものをつけて日報分析や顧客アンケート分析からブルーオーシャンを見つけるようなことを言っていたけれど、その後話も聞かなくなった。その時に言われていたのは、「文章の要約はできない」と言うことだったが、アメリカ人が作ったAIソフトで全然、へっちゃらにやれている。
英語しか知らないアメリカ人が作った「生成AI」で、日本語の文章でチューリング・テストをクリアできるようなことが実現している。つまり、言語の構造や文法などを超越している言語の「汎用的」解決ができているということ。
ブロックチェーンにしろ、生成AIにしろ、GAFAMにしろ、日本の出る幕は「お金」しか無くなっているが、そのお金も人口減少と共に潰えようとしている。残るのは老人ばかりだ。
中小企業ではDXが進まず、その理由は「DXに関する知識・情報の不足」「DXを統括・推進する人材の不足」だというけれど、中小企業にとって間接的なことに投資するのは余裕がなければやめたほういい。
大企業であろうが中小企業であろうが、DXの前にやるべきことは人事制度の見直しと職務マニュアルの整備のような気がする。