死刑執行の現場

2018年1月にオウム真理教関連の裁判が終結し、同年7月に元幹部13人に対して相次いで執行したことは、衝撃的であったと同時に、死刑執行という法の執行に関するご都合主義に大いなる疑問を感じさせた。

政治的な力が働けば、究極に厳粛であるはずの「死刑」でも、たたき売りのように執行してしまうのであるなら、司法への政治介入を許す日本の刑事政策には、明らかな欠陥があると言わざるを得ない。

純粋な法解釈をめぐる司法の専門家が裁いた結果を、何もわからない法務大臣という究極の素人が、さも神妙な顔をして死刑執行の命令書にサインをすること自体、彼ら彼女らの判断の根拠に寄せる信頼など有るはずもなく、この制度自体が司法制度を侮辱しているように思う。

実態は藪の中だが、法務省の官僚がいきなりオウム真理教の死刑囚のリストを法務大臣へ持ってくるはずもなく、法務大臣という傀儡の権力者が法務官僚に強要したのだろうと思う。あくまでも推量だが。

以前、TBSが「無期懲役」の特集をYouTubeにあげていたが、今回は「死刑」を動画にしてYouTubeにあげていた。

テレビ局特有の「臭さ」は禁じ得ないものの、いくつか興味深い点があった。

包紙に 書かれし最中の 文字を見て 刑執行の 最中とつぶやく

死刑の直前に最中とタバコをもらって刑場に消えた死刑囚の話を元刑務官が歌にした。その死刑執行に立ち会った元刑務官の話では、ボタンが押された瞬間、奈落へ落ちる最中に「お世話になりました」と叫んだとか。

踏み板の はずれし刹那 死刑囚 みじかき謝辞を のこし落ちけり

これは、そうしようと固く決意していたのだろう。

死刑執行は3つのボタンを3人が同時に押すことで踏み板が外れるそうだが、3人全員がボタンを押さない異常事態が起きることがあるらしい。同様のことは何度か起きているという。その時は、責任者が直接執行のレバーを引くそうだ。システムとしては、そこまで考えられていて、3人用のボタンとは別に責任者用のレバーも用意されているとのこと。

当然のことながら、3人のうちでボタンを押さなかった人がいれば、それは誰かも察知されているろう。

2023年6月5日時点で、収監中の死刑囚の人数は「107」人いるとのこと。無期懲役は2021年末で「1,725」人。