理論と説

その昔、マズローの「欲求階層説」という「説」があって、初めて本で読んだとき、目からうろこだった覚えがあります。同時に「自己実現」という言葉の響きに魅入られました。

しかし、後日、別の本(より、学術書に近い)を読んでいたら「マズローの欲求階層説は統計的に裏付けが取れていない」と書かれていました。

世の中に理論と呼ばれているものは数多くあるがその大半は実は仮説である。事象から帰納的に導かれた理論はすべて仮説といってよい。厳密で正しそうに見える物理学の理論でさえ本質的にはすべて仮説である。

https://you2.jp/shimizu/%E3%82%B3%E3%83%A1%E3%83%B3%E3%83%88-85.htm

要するに帰納的に導き出された、あるいは、学者・評論家が体験的に分類することができた現象に名前を付けて「理論」としたものの、ほとんどは「説」に過ぎない。その説を担いで、メディアなどを通じて喧伝することでまことしやかになっていくだけのような気がする。

が、とはいえ、通底する部分において、マズローの「欲求階層説」のように、さもそれらしく「なるほど」と思わせる「何か」がるのも事実である。

今朝見ていたYouTubeで「成人発達理論」という言葉があった。「ハーバード大教育大学院のロバート・キーガン教授が、、、」とくると、なんとなく「理論」がまことしやかに見えてきます。

第一段階「具体的思考段階」
言語を習得した子ども・未成年がこれに該当します。よって、成人は第二段階以降に分類されることになります。

第二段階「道具主義的段階」
他人の立場でものごとを理解することが難しく、他人を道具のようにみなします。

第三段階「他者依存段階」
他人の立場を理解できるものの、自らの価値基準が定まっていません。組織では上の決定に無条件に従いがちで、自律的に行動できない状態です。

第四段階「自己主導段階」
価値基準がはっきりと定まり、他人の考えを尊重しつつも自分の判断で行動することができます。

第五段階「自己変容・相互発達段階」
他人の価値観を柔軟に受け入れ、他人との関わりあいの中で自分・他人の両方の成長を促すことができます。この段階にいる人は人口の1%にも満たないといわれており、組織内ではリーダーの資質を持つ貴重な人材といえるでしょう。

第一段階と第二段階を纏めると、これを「利己的段階」とすることができると言っています。この段階をリーダーシップに当てはめて考えると、「自己変容・相互発達段階」に達しているリーダーが養成されていない組織は、いずれ凡庸化し、組織が崩壊しかねないという理論になります。

なんとなくまことしやかな「理論」のようですが、そのバックにどれだけのデータがあって一般化されているのかとも思います。

生まれると同時に天上を指さす子供だっているわけで、常に段階を追って発達するわけでもなく、さらに「成長」とは、生物的成長はご飯食べて睡眠をとっていればするものですが、精神的成長はヒトとの交わりが無ければ健全性を保てるわけではありません。

世の中は思っているほど安定していないし、識者が言っていることに間違いもたくさんある。「理論」も仮説に過ぎ「VUCA」により、揺れ動いている。

VULA」とは、「Volatility(変動性)」「Uncertainty(不確実性)」「Complexity(複雑性)」「Ambiguity(曖昧性)」のこと。