「会長に挨拶しなかったからクビね」という記事
平成11(1999)年というから、四半世紀も前のことを、まぜ、いまさら掲載するのかは意図不明ですが、有りそうなことだなと思います。政治家でも、ずいぶん横柄な人だなと感じることも少なくありませんが、とどのつまりは「権力」のなせるわざなのでしょう。
権力を持つと、その人本来の本性が現れるのか、はたまた、その人本来の本性が捻じ曲がるのかはわかりません。
たしか、イーロン・マスクの会社に日本からヘッドハンティングされた人が、たまたまエレベーターでマスク氏と一緒になった。そこでマスク氏が何かを質問したそうですが、その答えが気に入らなかったのか、その場で解雇になったというようなウソか本当かはわかりませんが、さもありなんとするようなまことしやかなことが書かれている記事を目にしたことがあります。
表題の記事は「弁護士ドットコムニュース」で目にしました。武富士の会長がオフィスに来たとき、起立して頭を下げたのだそうですが、声を出さなかったということで激怒して解雇になったことに対して裁判で勝ったという話です。
戦前の軍事物の映画では、誰かが「恐れ多くも」という途端に全員が起立してカカトを付けて直立するようなシーンをよく見ますが、あの場合は天皇が武富士の会長のようなことを強いているのではなく、「天皇」の権威を使って権力行使をしようとする組織があったことによるわけです。
わたしのオヤジは陸軍中尉だったのですが、南方のどこでのことだったかは聞き漏らしましたが、寺内元帥の車が通りかかった時に部下が静止敬礼をしなかったということでオヤジが憲兵隊に呼び出されて鉄拳制裁を受けたというようなことを何かの折に語っていました。これとて、寺内元帥が武富士の会長のように中隊長を呼び出して制裁しろなどというわけもなく、憲兵が元帥の権威を使って権力行使をしていたのでしょう。
「戦艦大和ノ最後」という本に、士官の前を静止敬礼をせずに走り抜けながら敬礼をした下士官を、注意し諭した上官が振り向いたら、その士官の上官から鉄拳制裁を受けるというシーンが書かれています。この場合の教訓は、規則があって規則を守らない場合の対処には守らせる側にTPO(さじ加減)があってはいけないということと思います。
組織は効率を至上のものとしなければならないと思うのです。そのために規則(もちろん社会常識という主観も入るけど)があり、その規則は権力者におもねるためのものではなく、組織を堅牢にし健全にし競争に打ち勝つことを目的としているはずです。
にもかかわらず、組織階層を上り詰めていく過程で取り巻きの忖度などから内閣総理大臣ですら「思いあがる」ようで、決裁文書の改ざんを見て見ぬふりをしたりしています。意志の弱い人や目的意識の希薄な人は、権力の渦中に身を置かないことが逍遥たる人生を過ごす最良のことと思うのですが、「権力を持ってから言ってみろ」と言われそうなのでほどほどにしておきます。