こころの誕生

進化は脳の内側から外へと進み、表層に近いほど高次の機能を持つようになっている。特にヒトの脳では前頭前野と頭頂葉下部の皮質が異常に発達した。

五感から入ってくる様々な情報を前頭前野が整理して「現実」を構築している。現実の世界は前頭前野がわかりやすく解釈している結果である。特に優先して処理することを「注意」といい、前頭前野が感覚野に命令を送って詳細に見るようにしている。

前頭前野には「未来を予測」する機能があり目標を志向することができる。

脳は内側から外側に組織を増やしていった。大脳皮質は一番外側にある最も新しい組織である。動物にも「嫌」だという感情の好悪感があり、同様に報酬に向かう「喜び」もある。つまり、大脳皮質が発達していなくても心の原型があるといえる。

情動は全身の応答を含めたものと言える。感情と違って情動は客観的データとして科学的記述が可能になる。心拍数、血圧、呼吸数、発汗などの生理的機能は情動を推し量る客観的指標である。

情動の成立には情動を起こす事象の認知と身体反応の認知が不可欠である。身体反応が起きるとその要因を類推しようとする「原因帰属の認知」が情動体験を決定する。

状況に応じて行動パターンを選ぶ際には前頭前野による大脳辺縁系の制御も関わるこの部分こそが「意識」であり「意志」である。

報酬系の正体はドーパミンである。ドーパミン作動性ニューロンは前頭前野、扁桃体、海馬、側坐核に軸索を伸ばしている。ドーパミンが放出されると、その放出をもたらした行動が強化され、原因と考えられる行動がもたらす快感に抗しきれなくなる。「不確実性」があれば、さらに報酬系の反応が強まる(例えば違法賭博)。

感覚情報の基本として様々なことを恐怖や報酬の対象にしていく背景に「共感」や「社会性」が作用して「こころ」をより高度の精神機能とすることができてきた。

ヒトは前頭前野により未来を予測する能力も身につけている。将来の希望に向けて報酬系を駆動し、結果を想定しながら努力することができる。

つまり、「こころ」は、大脳皮質の認知機能、大脳辺縁系による記憶と情動の制御機構、そして報酬系と連動するシステムとして捉えることができる。

Follow me!