イーロン・マスクが中国で別格の待遇のわけ
アメリカ政府は中国に網をかけて絞り込みつつあるが、5月にはアメリカの大企業幹部が続々と中国もうでをしている。ADMのルチアーノ、GMのボラー、リオティントグループのバイ、スターバックスのヌスハイム、JPモルガンのディモン、アップルのクックらが、中国入りしているが、特筆すべきなのがマスクであった。
というのは、マスクだけが特別に中国政府幹部3人と24時間以内に面会し、その後、副総理と非公式に会見したが、外国企業のCEOと1対1であったのは初めてであった。
中国当局がマスクを格別に重要視していることが分かる。経済的な重要度で言うなら、JPモルガンのディモンもマスクに劣らない影響力を持っている。
にもかかわらず、なぜ、マスクだけが特別待遇を受けるのかというと、それはスペースXのロケット技術やスターリンクに関心があるのかもしれないが、だからと言ってマスクが中共にそれらの技術を提供することはきっとないだろう。
中国がマスクと一緒にタッグを組みたいと思っているのは「ニューラリンク」である可能性が高い。
2023年6月にマスクは超小型のデバイスを脳に埋め込む臨床試験を開始すると明らかにした。このデバイスを通じて脳とコンピュータでつなぐことで、からふぁが不自由になった人の意思表示や行動を支援する技術を実用化しようとしている。これはFDAからの承認も得ていて、実用段階に着実に迫っている。
ニューラリンクの時価総額は7000億円なので、テスラやスペースXに比べると大きな規模の企業ではないが、中共からすれば、これ等の技術よりもニューラリンクの知見を欲しがっていると考えられる。
各ワイヤーは髪の毛の20分の1程度で、ロボットが正確に大脳皮質に電極を埋め込む。電極から脳内を走る信号を読み取ることもできるし、脳に信号をかきこむこともできる。
人間の脳は大きく分類して「本能」「感情や意欲」「論理性(あるいは心)」の3つに分けられ、それぞれが脳の中での役割を担う場所が異なる。「論理性」は大脳新皮質が司っており、ここの部位が他の動物に比べて人間は大きい。
大脳新皮質の役割は「言語、理解、推論、論理、学習」などをコントロールしている。ニューラリンクの実験では、サルにコンピュータゲームを学習させたり、脊髄を損傷して麻痺してしまった患者にデバイスを埋め込み脊髄とは異なる系統の信号をやり取りすることで立ち上がることができるようになった。
人間の脳とコンピュータをつなぐことで、高い「知能」を与えることもできるようになるかもしれない。
中共は2014年に「制脳権」という概念を発表している。人民解放軍は「制脳権:グローバルメディア時代の戦争法と国家安全保障戦略」という本を出している。2018年に、防衛大学校科学技術出版局から「科学技術と軍の論理」という本を出し、「制脳権」から「制智権」へと概念を変えてきている。
中共の「制脳権」が政治や社会分野にまで拡大されれば、全体主義国家戦略の一部となり、人々の思考や行動を完全に制御できることとなる。人民の心を支配し、操り、好き嫌いや恐怖も制御することができるようになる。
したがって、中共にとって事業の規模を超えてマスクの持つニューラリンクに対する関心が最も高い理由になるのだろう。
マスクはニューラリンクでの実験で豚やサル、羊たちを必要以上に殺してしまい、内部告発されていた。マスクが人体実験を中共に持ち掛けていたとするとどうだろうか。これは両者にとってWin・Winの関係になる。
悪魔は悪魔にだけ分かる会話ができるということかもしれない。