死の定義
「死んだブタの脳の細胞機能を回復させることに成功した」と言う2019年の記事がナショナル・ジオグラフィックに掲載されていました。
と言っても意識が回復するわけではなく「ブドウ糖と酸素をとり込むといった細胞機能を、最大6時間復活させることができた」ということで、それが意味するものが何なのかになります。
日本では「死」を「脳死」か「心臓死」かを法で明確に決めていません。心臓死を死とするなら臓器移植に制限が多くなります。脳死で心臓が動いている状態なら臓器の鮮度が確保されているので、臓器移植の幅が広がります。
脳への血流が途絶えれば、私たちはものの数秒で意識を失い、それから5分もしないうちに、脳が蓄えていたブドウ糖やATP(生体内で使われる、化学エネルギーの共通通貨にあたる物質)は尽きてしまうのだそうです。
ここから不可逆的な(と思われていた)死のスパイラルに入り、神経細胞の化学作用が乱れ、脳内の血液が変質、やがて、神経組織を分解する酵素が活動しはじめ、脳の小さな構造や血管が破壊されるのだそうです。
一番、仲の良かった友人が死ぬ前日に病院に行きました。いびきをかいて寝ているのですが、医者が言うには多臓器不全が始まっており、肉体は死の準備に入っているとのことで、やはく「死」を迎えさせた方が患者が楽できるという見立てなのですが、母親は奇跡が起きるかもしれないとのことでモルヒネで延命するしかありませんでした。
というのは、死の原因となっているのが肺炎で意識はないとはいえ、何かの拍子に激烈に苦しむのだそうです。
脳死は、1968年に米ハーバード大学の医師からなる委員会が、「不可逆的昏睡」、つまり今で言う「脳死」の判断基準として、➀完全な無反応、➁自発呼吸の停止、③反射運動の消失、④脳の電気的活動の消失の4つを定めたのだそうですが、その後、どういう風になっているのかはわかりません。
死んだ豚の脳に生体の血液循環と同じように拍動する流れで、死んだ脳に栄養液を送り込むのだそうです。栄養液は、赤血球中の酸素運搬タンパク質であるヘモグロビンを主成分として脳に送り込むと、脳はブドウ糖と酸素を消費し、二酸化炭素を産生しているのだそうです。
その状態を「脳死」ではないと断言できるかと言うと「意識」は復元されていないのだそうです。
では、脳死はどうして起きるのかですが、事故と脳梗塞のような疾病が主たる原因だそうで、そこから蘇生させることは難しいようには思いますが、いずれは記憶を取り出すのようなことができるようになるかもしれません。
ちなみに、「脳死」は「植物状態」とは違うのだそうです。何が違うかと言うと、「脳死」は大脳、小脳、脳幹が働かなくなっている状態をいい、「植物状態」は、大脳だけが働かなくなる状態を言うのだそうです。自分で呼吸はできる状態です。「脳死」は自分で呼吸することすらできない状態だそうです。