病膏肓(やまいこうこう)という言葉が出てきた
「膏」は心臓の下部の心外膜をさし、「肓」は横隔膜の胸腔側の漿膜をさすといわれています。つまり、病気が心臓と横隔膜の間の手の下しようのない空間に逃げ込んでしまったために医者としてはお手上げになったという意味
「膏」の字は「膏薬」で使われていますので、「こう」と読めます。「心臓の下部の心外膜」を指しているとは知りませんでしたし、そもそも「心外膜」というものも知りませんでした。
「肓」は「盲」とは違って、下の部首は「月」になっています。「こう」と読むのだそうです。「横隔膜の胸腔側の漿膜」とのことですが、「横隔膜」くらいしか字を見たことがありません。
要するに「お手上げ」を意味するのだそうです。
中国の春秋時代、晋の景公が病気になり、秦から名医を呼ぶことになった。その日、景公の夢に二人の童子が現れて、「あいつは名医だから、おそらく我らは殺されるに違いない」と一人が言うと、「それなら肓の上、膏の下に隠れよう。あそこなら薬の力も及ばないから」と話すのを聞いた。やがて医師が到着して診察すると、「この病は膏肓に入っているから治療できない」と答えたという故事による。
ところで、「病膏肓」という字は何に書かれていたのかというと、
「息子を医大に「裏口入学」させた罪を着させられたキャリア官僚と、元文科事務次官・前川喜平の関係性」
「安倍政権「森友問題」の目くらましに利用された…⁉ 世間を大騒ぎさせた医大「裏口入学」事件の真相」
の2つの記事の前の記事中にありました。
東京地検特捜部の森本宏部長と廣田能英主任検事が描いた無理筋のシナリオを、東京地裁の西野吾一裁判長が推認に推認を重ねて有罪に仕立て上げた判決内容は、すでに病膏肓に入った日本の刑事司法の現状を改めて浮き彫りにした
ようは安部官邸に人事権があり、裁判官も検察官もお手柄を上げようとして躍起となって事件に仕立て上げた背景に、森友学園問題で前川前事務次官が「総理のご意向」を暴露したことにあったようです。
事実に関しては私などには見当もつかないことですが、思い出せば検事総長をどうにかしようとしていたようなこともあったので、近畿財務局に限らず、司法も含めて官僚機構が「病膏肓」になっているのは、国家と政治と官僚という組み合わせの宿命なのかもしれません。
政治家の知能で、このような込み入った処理を合法の範囲内でやり遂げることは困難なことだと思います。ということは、官僚機構が「病膏肓」になっているならば、官房副長官や首相補佐官などの内閣に寄り添う官僚の意向で指示が飛んでいるものと推察されます。
しかし、「白河の 清きに魚も 棲みかねて もとの濁りし 田沼恋しき」というあたりが、人間の本性であり、世間の潤滑に帰する掌(たなごころ)だと言えそうです。北朝鮮では官僚を操るのは「恐怖」のようですが、安倍政権はお金ではなく「昇進」というアンパンをぶら下げて「使い道のない偏差値」だけは高い連中を操ったわけです。
これが権力を持つ人間にとっての蜜の味であって、しまりの悪いフンドシを占めている人間が長く権力の座に就く弊害が如実に示されている典型的な例ともいえそうですが、古今東西、いかなる時代においても独裁の陥る普遍的なパターンじゃないでしょうか。
知能的にははるかに劣る政治家に額ずく東大出エリートの行動原理は凡愚にはわかりませんが、頭の良さをもっと違うことに使おうと思わないほど蜜の味がおいしいということに尽きそうです。