「暑さ対策」に無策の自衛隊

防衛省、自衛隊は国産兵器を開発する理由として「わが国固有の環境、運用に適したものが必要」ということを前提にしている。「わが国固有の環境」にもかかわらず、NBC(核・生物・化学)偵察車、軽装甲機動車などの一部を除いて、自衛隊のほとんどの国産装甲車両には乗員用のエアコンが装備されていない。

いまだに「精神力」があれば暑さを克服できると考えているらしい。

敵が生物・化学兵器を使用すれば、ハッチを締め、車体を密封して加圧して、外気の侵入を防ぐと言うが、夏場ならエアコンなしでは30分くらいが限界だそうだ。

自国開発ではコストがかかりすぎるからと言っても、海外から買おうとすれば横幅2.5メートルという規制にひっかかってしまうが事前に国交省に許可を取れば認められるようだ。

2016年に採用された16式機動戦闘車にもエアコンは装備されていなかったが、財務省からの強い要望によって装備されるようになったらしい。財務省にすれば、夏に暑くて使い物にならない装備を買うより、多少コストが上がってもまともな装備を買うべきだと考えたようだ。

調達数量がすくなく海外の数倍の費用が掛かることもあり、数をカバーするためにエアコンのような装備を想定しないとするなら、夏の戦争はしないということと同じこと。

いまだに、陸自の夏場対策は旧日本軍同様に「根性」に依存しているらしい。にもかかわらず岸田首相はFMSで1兆4千億円もアメリカから兵器を譲ってもらうようだが、お金は先払いで、納品はアメリカ任せという不平等契約に対し会計検査院も問題視している。

海外の装甲車には給水タンクが装備されているが自衛隊は1リットル程度の水筒1個が隊員に配られるだけ。海外では3リットルの背負い式水筒。

2023年度予算で「防弾ベスト」が予算要求された。8000セットで27億円。1セット約34万円。8千人以外の隊員は千人針で弾をよけるしかない。

塹壕足も防げない

塹壕足とは長時間、冷水浸漬(しんせき)をうけると起きる「塹壕足炎」という凍傷に似た足の疾患だ。塹壕足は16度ほどの温度でも13時間程度で発生する。第1次世界大戦のドイツやフランスで深刻な問題となった。

自衛隊の半長靴3型か戦闘靴2型では、防水浸透性素材のゴアテックスが内張りに使われている。この素材は雨を通さないが、水蒸気は通すという仕組みだ。一般の靴よりはかなり高機能だが、それでも塹壕足になってしまうのは、靴の中に迷彩服ズボンのすそを入れるため、衣服をつたって雨水や汗が靴の中に入り込んでしまうからだそうだ。

アメリカ陸軍の服装の写真を見ると、長靴の上からゴムで止めるようになっている。

さらに高性能な水陸用の靴もあるらしいが、一般隊員には配られていない。

まとめ

敵地攻撃能力とか憲法改正とか勇ましい話はどうでもよくて、自衛隊員の待遇改善と、本当に戦争するなら実際に戦う隊員の命を軽視するような精神力作戦はやめて欲しいものだ。

先の大戦で高官たちは自決した将官もいたが多くの将官は軍人恩給をもらって戦後の人生を謳歌した。

世の中、特にメディアは東京大学を卒業していると「お~」となる傾向があるが「勉強ができる」からといって、勉強以外の何かができるわけではない。

かつての帝国陸海軍の参謀は、陸大・海大を優等で卒業した人たちだけで構成されていたが、実際に戦争指導はあの程度だった。いまの自衛隊を取り巻く法規制だけを考えても、本当に戦争ができる体制になっているとは思えない。

憲法9条を書き換えれば強い軍隊になるわけではなく、真剣に取り組む人たちのなかに国会議員を組み入れて、現実的なことから法改正や予算配分を考えていくべきである。その際に注意しなければいけないことはたった一つ。東京大学とか防衛大学とかを出たエリートだけに任せないこと。

彼らの特徴は、頭の良さを仕事に活かすのではなく、仕事を使って自分の頭の良さを示そうとすることにある。これで先の大戦も失敗した。

昔の職場で、先輩が「頭で来る奴は力で抑えろ。力で来る奴は頭で抑えろ」と言っていた。いまの政治家で、官僚を力でねじ伏せるだけの胆力が無ければ、頭では負ける。ゆえに、官僚の書いた原稿を読むばかりの閣僚が排出されている。つまりは頭も力もない政治家が官僚に使われているということ。