ダイヤモンドは希少ではない
ナショナルジオグラフィックの記事によると、ダイヤモンドは決して希少な宝石ではないらしい。ダイヤモンドの専門家とされたグラディス・バブソン・ハンナフォードは、広告代理店に雇われていた。その彼女のミッションは「アメリカ女性にダイヤモンドを欲しがらせること」だった。
彼女は学生に「永遠に品質が変わらないダイヤモンドは、永遠の愛と結びついているのです」と語ることで、女子学生が婚約者にダイヤモンドを贈らせるようになった。
1960年代には、婚約者にダイヤの指輪を贈る伝統など存在していなかった。
西ヨーロッパで注目されるようになったのは13世紀以降のことで、カットや研磨の技術が向上し、きらびやかな輝きを与えるようになっていく。
1860年に南アフリカで、デビアス兄妹の農場でダイヤモンドが発見され、セシル・ローズに引き継がれダイヤモンド産業の「デビアス」が誕生するが、供給過剰になってしまった。そこで狙いをアメリカにした。
1940年になると、広告代理店に依頼し婚約指輪として浸透させていく。1947年にエリザベス女王が南アフリカに行きデビアスからダイヤモンドを贈られている。フィリップ殿下から贈られた婚約指輪にもダイヤモンドが使われていた。金はウェールズのクロガウ金鉱山で採掘された希少な純金を使うのは英国王室の伝統。
デビアスは、女性の指にダイヤモンドを輝かせるのは、男の甲斐性だと訴えかける。1948年のキャッチコピーは「A Diamond is Forever」。今でも使われている。
ダイヤモンドが希少ではないとするなら、価格は何で決められているのかということになる。デビアスをはじめとした一部のシンジケートによって価格が操作されているようであるし、品質にも様々あって、粗悪な品質のダイヤモンドも結構あるようだけれど素人には分からない。
日本では、戦後に行ったキャンペーンにおいてダイヤモンドは「欧米風の生活におけるステータスシンボル」として扱われた。その結果、1960年代以降の高度経済成長とともにその販売数が増加し、今日では世界で第2位のダイヤモンド小売市場となった。
ダイヤモンドの年間産出量は25トンと言われており、金の3150トンに比べるとかなり少ないうえに、宝石として流通されるグレードのダイヤモンド原石は、総採石量の15~20%程度。20%とすれば5トン。
1カラット0.2グラムで換算すると、2500万カラットが毎年宝石用として生産される。1カラットのダイヤモンドを毎年2500万人が買うかと言えば、有り得そうもない話で、「希少性」は言うほどにはないかもしれない。単に宣伝とマーケティングが市場を形成しているだけとも言えそうだ。
宝石も、化粧品や健康食品と同じく、キャッチコピーと宣伝で買うような商品ということかも。