鉄道事故と賠償
5月4日に愛知一宮市の東海道線の線路内にフェンスを破って車が入り込み電車と衝突した。車は無人で、近くにいた女性を列車往来危険の疑いで逮捕した。女性は「死んでもいいやと思った」と供述しているそうだ。
そこで気になるのが「損害賠償」。鉄道事故を起こすと大変な金額になるという話は、結構出回っている。
2009年、大阪で風邪薬と飲酒の影響でホームから転落し電車に轢かれて死んだ。この時鉄道が遺族に求めた損害賠償は「85万円」だった。判決では減額されて「30万円」になった。
2011年、大阪で踏切内に停車していた自動車に電車が衝突し自動車を運転していた男性が死亡した。このとき、鉄道が自動車の保険会社に請求した金額は「7800万円」。判決は「車の運転者が故意に起こした事故」として保険会社には支払い責任がないとして請求棄却している。
保険会社に支払い責任がないとした判決は、自動車事故において「過失」が前提になっているからで、「故意」なら保険が成立しなくなってしまう。なら、鉄道は遺族に「7800万円」を請求したのかについて動画では触れていない。「故意」で、鉄道に多大な損害が発生しているのだから、おそらく、その裁判がおこされたか、明らかに支払い能力がなければ減額して示談も大いにある。
明らかに払えない遺族といつまでも裁判していても、お金は返ってこないから。
遺族としては「相続放棄」することもできる。
さて、冒頭の事案では悪質性が高いことを考えると、1000万円台は請求される可能性は高く、かつ、当然保険の対象にはならない。その上、列車往来危険罪として起訴される可能性も高い。
損害賠償と言えば、「スシロー」の店舗で客の少年が醤油さしをなめる動画が拡散した問題で、スシロー側が少年に対して6700万円の賠償を求めて裁判を起こした。少年側は争うそうだが、何が争点なのかは分からない。おそらく少年の未来を斟酌してほしいというあたりかも。
旭川で自殺した少女の学校の教頭先生が「10人の加害者の未来と、1人の被害者の未来、どっちが大切ですか。1人のために10人の未来をつぶしていいんですか」と遺族の母親に伝えたそうだが、これは珍しい話ではなく、教育現場からすると加害者を糾弾するより被害者を黙らせる方が面倒が少ないらしい。
スシローのいたずらと、故意で犯した鉄道事故の被害額が、ほぼ同じというところに注目しておきたい。