「ピーターの法則」という法則

  1. 能力主義の階層社会では、人間は能力の極限まで出世する。したがって、有能な平(ひら)構成員は、無能な中間管理職になる。
  2. 時が経つにつれて、人間はみな出世していく。無能な平構成員は、そのまま平構成員の地位に落ち着く。また、有能な平構成員は無能な中間管理職の地位に落ち着く。その結果、各階層は、無能な人間で埋め尽くされる。
  3. その組織の仕事は、まだ出世の余地のある人間によって遂行される。

1969年に南カルフォルニア大学のローレンス・ピーター(Laurence J. Peter)が「THE PETER PRINCIPLE」で提唱した。法則とは言え、単なる「説」でしかないが、モデル化の研究がおこなわれているというけれど、提唱してから半世紀も経っているから、その後、どうなっているのかはわからない。

簡単に言うと「ある問題に有効な手段が、さらに困難な問題に対して有効とは限らない」ということを人事で指摘している。

階層組織の構成員はやがて有効に仕事ができる最高の地位まで達し、その後さらに昇進すると無能になる。この地位はその人材にとって「不適当な地位」であり、もはやさらなる昇進は望めない。

係長が限界の人、課長が限界の人、部長が限界の人のように、限界を迎えた役職の人材は、その役職に対して「無能」であるポジションにとどまる。そうなると、組織の階層はいずれ無能ぶりを発揮する人で埋め尽くされることとなる。

限界を超えた役職が総理大臣である人材は、当人は無能ゆえに、さほど困惑していないようだけれど、国民にとって悲劇だ。

必ずしも高い地位がより難しい仕事であるという意味ではない。単純に、以前優秀であった仕事と仕事内容が異なるだけである。要求される技術をその人材が持ちあわせていないだけである。

例えば技術者として有能だからといって課長にすれば、課長職として有能であるとは限らない。

よって、企業の運営は「まだ『無能になる』地位まで達していない人材」によって運営されているうちは、まだ革新性があったり新規性があったりするが、いずれは無能という限界に達することになる。それが経営幹部である限り、企業の柔軟性は欠如していき、いずれ硬直化していく。

ピーターの法則を是として、その無能ぶりを止める有効な手段として

昇進せずとも昇給する制度を有効に機能させる
昇進しても無能ぶりが露呈したら降格させる

とはいっても、赤飯炊いてもらってから降格はあり得る話ではないので、内部昇進だけでなく外部から課長職、部長職人材を積極的に入れていくこととか、専門的職種を請負化していくことが有効としているが、帰属意識や忠誠心を涵養することは出来ない。

いずれにしても、人間に感情がある以上、組織と人事の関係は、企業にとっての合理性だけでは解決できない問題を多々はらむ。それを打破できるのはリーダーシップとリーダーのカリスマなのだろう。カリスマもなく、リーダーシップもないリーダーは、ひたすら「検討」するばかりで「決定」ができない。