「スキャンロン・プラン」という賃金体系
端的に言うと「スキャンロン・プラン」とは、売り上げに応じて従業員の給与額を変動させる賃金体系。アメリカ鉄鋼労働組合の幹部であるジョセフ・スキャンロンによって提唱された。
日本企業では、賞与原資に採用している企業もあるという。
スキャンロン・プランを採用すると売上高と報酬が連動するのでモチベーションが上がるような感じがするが、その労働が単純労働でない限りは、従業員のモチベーションは経済的刺激だけではないともされている。
計算は、「賞与原資=(売上高 × 標準人件費率)-すでに支払った給与」として算出される。「売上高 × 標準人件費率」は、過去の売上高に対する人件費の比率で決めておく。
業績が下がれば成果に伴わない賃金の過払いを抑制することが可能になる。
前提として、年功による賃金形態から変更しようとすれば抵抗が予想されるが、そもそも、年功によって賃金が上がる根拠は示しにくい。これは、労働者が不足した時期に、労働者をつなぎ留めておく施策でしかなく、忠誠心を引き出すことに直結しているわけではない。
スキャンロン・プランに、勤続年限に応じた株式の持ち合い制度を併用すれば、株を持ちたくなければもたなければいいので公平感を上げられるし、長く勤続すればそれだけ多くの株式を持てることになるので、業績さえ上げられれば配当を多く受け取れるようになる。
ただし、売上に連動させるのがいいのかは不明。本来的には「利益」に連動させるべきであるが、そうなると日本企業のように内部留保を持ちにくくなるし、投資や研究開発にもネガティブになっていくから、利益連動も難しいことになる。
突き詰めていくと、どうも「チームX」のような社風になっていくような気もして、人間関係が殺伐としてきそうだ。
年功序列を廃止することには合理的理由のほうが多いようであるけれど、純粋な成果主義は当面の日本の労働環境にはなじまない。とはいえ、考え方をカスタマイズすれば年功序列より成果を上げることができそうな気がする。
政治も経営も「公平性」と「公正性」が保たれるメリットがある。政治的圧力から賃金アップを5%するなら、とっととやればよかっただけのこと。いったん賃金を上げれば下げることが難しく、かつ、年功において賃金を上げても、さほどモチベーションが上がるわけではないから、現下の賃金制度が最適というわけでもない。
それは、経営幹部はわかっていて資生堂やオムロンなどでは40歳とか45歳以上の年齢をターゲットにしているのは、年功で賃金を上げてきたものの、能力に見合わない賃金になっている層を排除しようとしているだけのこと。
ある意味、当然の帰結。