拘置所の医師に治療義務違反はない

大川原化工機をめぐって起訴後に拘置所で適切な医療を受けられなかったとして、同社の顧問が癌で死亡した件で賠償を求めて国を訴えた。

一審判決で訴えは退けられた。判決理由は「治療義務違反などは認められず、違法ではない」とのこと。つまり、内視鏡検査は細胞診などの体制が拘置所の医療設備や医師の医療レベルには制限があるということになる。

拘置所とは性質が違うが、名古屋出入国在留管理局に収容されたウィシュマ・サンダマリさんも、適切な医療を受けられたら生き延びていた可能性は高いが、保護責任者遺棄致死罪や業務上過失致死罪の適用も検討されたが、職員の行為と死亡との因果関係を認めることができなかったとして対応し、放置した職員全員が不起訴になっている。

検察審査会では「不起訴不当とする議決」を出したが、議決を受け名古屋地検は再捜査を行ったが不起訴(嫌疑なし)として捜査を終結している。

拘留執行停止の根拠として拘置所(入管も同様)での医療レベルで対応できない場合の転院などの在り方を問うことになる。

京都アニメを放火した犯人(逮捕当時被疑者)は、全身の93%をやけどを負っており、近畿大学付属病院に送られて時点の死亡確率は97.45%だったそうだ。

この治療にあたったのは上田医師(当時、近畿大学付属病院、現在、鳥取大学医学部付属病院)は「医療の未熟さで患者さんとかが不利益を被ったり、命を落とすっていうのは、見たくない」と言っている。

考えは複雑で、前者は不当逮捕として検察は控訴取り消しをしている。国家賠償訴訟としては国と東京都、および原告も控訴している。つまり、争点は賠償額であって、事件そのものは控訴断念しているので無実であった。

後者は、まがいようなき実行犯であり、通常の高度医療であっても死を免れなかったが、通常以上の高度医療を最高レベルで受けられたことで死を免れている。医療にかかった費用は、国が払う以外にない。

事件から10か月後に逮捕され、一審判決は「死刑」が求刑され弁護側が控訴している。

思いは複雑で、軽薄な私見を述べることはやめるが、検察が純粋な法の執行機関で公平と公正を金科玉条にしているわけではないのは、昨今の裏金事件に限らず、独裁国家の野蛮国よりはいささかマシではあるというレベルのような感じがする。

安部政権時代には恣意的に検事総長人事に介入して定年延長などと言う悪質度の高いゴリオシをしようとしたものの、不思議なリークによってご和算になったということもあった。政治におもねる検察では公平も公正も疑ってかからなければならない。

鈴木宗男さんの体験で「人質司法」という手法で、ともかく検察の言いなりの調書に署名しない限り1年でも2年でも拘留されることになるらしいので、まずは、検察のご厄介にならないように浄く正しく生きる以外にないのが、現在の日本の姿である。それで治安が保たれれば、それで良しとしましょう。