米国は中国に対して戦略的失敗を繰り返してきた

ブリンケンの訪中は前向きな兆しがあるという印象を与えた。席順を見る限りでは、習近平が皇帝の位置に座り、外国に使節団と官僚が向き合う形になっていた。

バイデン政権が中共を封じ込めることを期待していた人は一方的な幻想であった。アメリカは再び「狼と踊る(ダンス・オブ・ウルブス)」のだろうか。

歴史を振り返ると、中共の成長、権力の奪取、人民への虐待、世界への脅威のは、すべてアメリカの対中政策から生まれている。アメリカの歴代政府は、第2次世界大戦、国共(国民党と共産党)内戦、朝鮮戦争、ニクソン訪中、中国のWTO加盟などの一連の戦略的失敗を振り返ってみる。

1945年2月、クリミアのヤルタで会談が開催された。ルーズベルト、チャーチル、スターリンが出席して戦後世界の取り決めが目的であった。ソ連は対日参戦をし、戦後、中国東北部から南下を始める。国民政府に知らせることなく、秘密裏に調印された。

アメリカは、日本の軍国主義に対して中共やソ連という共産主義という悪魔と手を組んだ。戦後アジアの中心は中国になるであろうことから、分断して統治しようと考えた。

国共内戦は、都合がよかった。ソ連は和平交渉を促したが、裏では南北に分断しようしていた。蒋介石を差し置いてヤルタ会談で合意したことは中国に大きな損失を与えた。

アメリカは国民党を支持し、ソ連は共産党を支持した。アメリカとソ連は、中国を分断してそれぞれをコントロールすることが目的であった。

日本のポツダム宣言受諾後、ソ連は南下し日本軍が放棄させられた武器を中国共産党に渡して武装させた。中共は中国東北部を支配することで影響力を拡大した。アメリカは国民党に対して中共と連立することを持ちかけたが、蒋介石は中国東北部を国民党が引き継ぐことを提案し中共の東北侵入を拒んだ。

ソ連は中共の東北部侵入を許し、東北と華北の自治を提案した。アメリカは中共の要求を支持し解決策とみなした。しかし、蒋介石は中国分割案を受け入れなかった。アメリカと国民政府の間に意見の相違が生じた。

国共両党の対立を調停するためにアメリカはマーシャルを派遣した。もし、アメリカが蒋介石を支持すればアメリカはソ連と直接対立することになったが、それはアメリカが望まないことでもあった。

このことが、アメリカが国軍(蒋介石)への軍事支援を撤回した理由である。つまり、アメリカは蒋介石の共産党討伐を支持しないこと決定したわけである。

マーシャルは、蒋介石が2か月しか持ちこたえられないと認識していた。国民党は危険なほど、武器が不足していた。蒋介石はフィリピンやインドなどと連携して中共に対抗しようとしたが、アメリカによって阻止された。蒋介石は最終的に敗北し、台湾に退避することとなった。

しかし、アメリカは台湾に樹立した中華民国を正式に承認しなかった。つまり、当時のアメリカは国民党への支持を放棄した。アメリカの国民党不支持を受け、中共はソ連の支援を受けて勢力を拡大し中国に政権を樹立した。結局、アメリカの先見性のなさによって中国が共産党政権によって支配されることとなった。

1950年に朝鮮戦争が勃発した時は、まだ中共がすべてを平定しておらず各地に国民党の残存勢力が残っていた。蒋介石は朝鮮戦争を利用して大陸への進出を画策していたが、アメリカは国民党に対して武力で阻止すると通告した。同時に蒋介石の部隊が朝鮮戦争に加わることも許可しなかった。

マッカーサーは蒋介石の軍隊を国連軍として参加させようとしたがトルーマンが反対した。トルーマンは後にマッカーサーを解任した。台湾の国民政府が大陸に反撃するチャンスをアメリカは放棄したことになる。

トルーマンは朝鮮戦争において中国本土への攻撃を許可しなかったため、中国は支援を安心して北朝鮮に送ることができるという致命的な失敗をしている。

1972年にニクソン大統領が中国へ歴史的訪問をした。当時中共はソ連との関係が悪化し、ソ連から大きな脅威を受けていた。ソ連は核兵器を使用して中国各地の核施設を攻撃する準備をしていた。

アメリカはソ連に対して核攻撃を行えば、アメリカは行動すると警告した。結果として危機に瀕した中共を救うこととなる。ソ連に対抗するためにアメリカは中共と手を結ぶこととなった。

アメリカは「石を持ち上げ自分の足を打つ」ことになっていくが、1978年から開始された改革開放政策により、中共はアメリカから最恵国待遇を得ることができた。WHOに加盟でき、前例のないほどの優遇を受けられた。アメリカの政治家は、経済が成長すれば中共の人権意識と言論の自由を促進すると考えていた。

それは「幻想」であったことが証明された。アメリカ自身の先見性のなさが、最も強力なライバルを生み出すこととなった。

中共の軍事費支出は、1978年に100億ドル(1兆4千億円)だったのに対しアメリカは1134億ドル(16兆円)で9%だったのが、2021年においての中共の軍事費支出は2934億ドル(41兆5千億円)に対し、8007億ドル(113兆円)で37%にまでに増加してきている(それも公表されている数字で)。

この40年で中国の軍事費は28倍にまで増加している。

中共は新たな世界秩序を作ろうとしアメリカに対する脅威は、かつてのソ連、今のロシアよりも深刻になっている。いまだに、人民を安価な労働力として提供することで、日欧米による絶え間ない投資を受けて力をつけ続けている。

中共を邪悪な悪魔にしているのは、すべてアメリカによる判断の誤りが根本原因となっている。

西洋が中共に欺かれるのは経済利益に誘惑されているからにすぎない。大企業は中共の腐敗に協力し、中共による人権侵害に声を上げることもせずに目をつぶってきた。

バイデン政権は中共を「競争相手」としているが、「戦略的な敵」とでは大きく異なる。

アメリカがこの期に及んで、中共を「戦略的な敵」として認識しないのであるならば、世界にとっての脅威と災難になるのも時間の問題である。