円安を考える

ドルが強いのか、円が弱いのかを考えなければならない。

為替介入には「円売り」介入と「円買い」介入がある。「円売り」は、マーケットから円を借りてきて売ることができるが、「円買い」介入は、持っている外貨を売って円を買わなければならない。日本はドルを160兆円くらいしかもっていないので、限度がある。

介入すれば、そこを見透かしてファンドがアタックをしてくる可能性が高い。外貨準備が不足しているところをアタックするのが新興国における「通貨危機」のこと。

この図は、どれだけ円安なのかを指数にしたグラフ(実質実効レート:各国との貿易量から換算)で、この図が示しているのは1990年代からの円安などではなく、1970年代(1ドル360円だった時代)から見ても最低水準にある。

というには、諸外国では物価も上がっているが賃金も上がっているのに、日本だけはこの30年、賃金は上がるどころか実質下がっているからである。それを含めて指数化すると、サンタン(惨澹)たるものとなっている。

この円安は国際的には「購買力」が失われているということになる。では、こんなに円安なのに、だれも「円」を買いに来ないのはなぜなのだろうか?

この「誰」とは、実は日本の企業なのである。

2011年に東日本大震災が起きたあたりから、日本企業が海外投資を盛んにしだしている。このことは、日本企業が円を売って外貨を買っていることになる。

その反面として、欧米では「保護主義」が強くなっていて、円安になったからと言っても、日本企業が生産拠点を日本に戻せないことが続いている。賃金でいうなら日本の賃金はアメリカの4割程度にまで下がっているのに、国内回帰ができない状態になっている。

原油価格が下がったくらいでは貿易収支が黒字化できなくなっているのは、輸出がそれだけ振るわないかである。そこにウクライナ戦争が起きたことで原油価格が高騰することになってダメージが広がっている。

さらに、Google、Amazon、Netflixなどの、主としてアメリカIT企業のサービスに多大な金額を消費している。これはアメリカ企業にお金を上納していることになる。この金額はインバウンドで入る金額よりはるかに大きい(1.5倍を超えている)。その上、食品もエネルギーや資源も輸入に依存している。

緑色の部分が、アメリカIT企業への上納金になる。オレンジ色が主としてインバウンドなので、巨大が額が外資に流れている。

つまり、サービス、食品、エネルギーなどを、すべて輸入に頼っているうえに、モノ作りは海外に生産拠点を移してしまったので、貿易黒字を稼げなくなっている。

アベノミクスでは円を売ってくれることを喜んでいた。株価も上がった裏で貿易終身がどんどん悪化していた。

さらに、日米の金利差が大きいことも影響を持っている。これから日銀はマイナス金利を「ゼロ」にするのだろうけれど、金利差はたいていのことではを埋めることができる状況にはない。

どう頑張ってもいずれ(5年以内くらい鴨)金利は上げざるを得ない。

その上、ウクライナやパレスチナなどの紛争が起きると、エネルギーや食糧の価格が高騰するので、その分、日本はドルを買わなければならなくなる。

つまり、金利差だけのことではなく「構造的」な要因が大きく作用している。ここを脱するためには経済構造が大きく変化するなどしなければ、さらに円安は進むと見たほうがよさそうである。

右端のトルコを除くと、世界中の通貨に対して円安になっている。ただし、トルコでは通貨が弱くなった分、株価が劇あがりしている。

まとめ

結論は、この円安は回避できないということ。円安がさらに進むことで日本の株価は上がっていく。物価も上がっていくことは回避できない。現状500円のビッグマックが900円になるくらい物価は上がっていく。それに追いつくだけ賃金をあげられない企業は淘汰されていくことで人材の流動が始まる。

円安になっている要因は、円を買う動きがないからでそこにはいくつかの要因がある。

アベノミクスなどによる超低金利
日本企業による海外投資
アメリカのサービス(GAFAや動画・音楽配信など)に大量の消費が使われている
エネルギー、食糧、各種資源の輸入

遠因として人手不足を上げることもできる。60歳の労働者一人を20歳の若手で補うとしたら0.6人にしか該当させられない。これが、さらに進んでいくのが現状の少子化。

よって、日銀が金利を上げたぐらいでは円安は解消することは出来ない。とはいえ、そろそろマイナス金利はやめるところには来ている。しかし、利上げをすれば借金をしている人、住宅ローンや企業の運転資金。そして、新たな国債は金利分、目減りしていくことで財政を圧迫していく。

対策は、ともかく外貨が稼げる国に立て直す以外に円安構造をかえることはできないのが現状の結論。となると、一つには熊本にTSMCを誘致したようなプロジェクトを各地でも積極的に行うような取り組みも視野に入れていくことは効果があることであるが、人材を集めるためには賃金をあげなければならない。

外資企業が日本企業の労働賃金の1.5倍とか2倍払うようになれば、日本企業も賃上げをしなければ人員の確保ができなくなる。

結論は、それだけ日本が弱くなっているということ。アベノミクスは円安を誘導したことで株高にしたけれど、景気は悪化し実質賃金は下がる一方になった。国民からすれば失敗であったことは間違いがない。ただし、上場企業にとっては大成功だったということでもある。

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