牛乳を飲むということ

動物が母乳を飲むのは、子供の時だけに限られている。人間も母乳を飲む時期は限られている。にもかかわらず、大人になっても牛乳を飲み続けている。

トルコで見つかった8500年前の陶器から乳脂肪の痕跡が使っている。

同じ場所から発掘された動物の骨から、当時の家畜はヤギやヒツジではなくウシであることが分かっている。

しかし、7000年前までの成人は一様に乳糖不耐症であったことから、牛乳を直接は飲んでおらず、何らかの加工をしていたのだろうと推理されている。

現在も、世界の68%の人は、ミルクに含まれる乳糖(ラクトース)をうまく分解できない乳糖不耐症だと推定されている。ミルクを発酵させてヨーグルトやチーズなどの乳製品に加工すれば、乳糖を減らせることができるので、加工していたことは容易に考えられる。

成人でも乳糖を分解できる人々が現れたのが5000年ほど前のことだとされる。酪農文化は人類の文明を発達させた大きな原動力となったであろう。栄養価の高い食料が一年中手に入るようになり、主食を大規模に生産できるようになったことは、大きな変革になった。

トルコで生まれた酪農技術と牧畜民はコーカサス地方に拡大し、その後、ヨーロッパにも広がった。約3000年前の青銅器時代には、赤ん坊の離乳に牛乳が使われていた可能性もある。

そんな牛乳であるが、国内での需要減少もあって生乳が余っているのにもかかわらず、13万7千トンも輸入している不思議がある。これはWTOによる、「関税割り当て」という仕組みがあって、13万7千トンだけは低い関税で輸入ができるような約束になっている。

「関税割り当て」を使って輸入すると、国内生産より小売価格を下げることができるという説明を農林水産省でしているけれど、「関税割り当て」枠いっぱいまで輸入していて、国内生乳が余っているというのも、いかがなものかという気がするものの、ようは、国内生産価格が高いことに起因することに尽きる。

食料自給率が低いとよく言われるけれど、中国のような邪悪な国からの輸入は、政治的意図によって、いつ止められるかが分からない。戦前に、石油やくず鉄を止められたように、食料品が国家の生命線にならないようにするという掛け声はいいとして、それで農家を守ろうとする自民党の思惑も見え隠れする。

ポイントは、いかにして安く生産するかを徹底的に極めていくことが肝心であるが、補助金・助成金で楽してきたツケが回ってきている。農業も酪農も、生産革命を起こして、いかに輸入物品と価格競争に勝つかを政策的にとらえていかなければならない時期に来ているが、利権の壁が立ちはだかる。

岸田内閣がどうのというレベルではなく、日本の政治の根本から見直さなければ何も変わらずに、ジリ貧になっていくだけだ。

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