郵政民営化(2007年)の現時点での成否

稲村公望さんの話。稲村さんは、1972年に郵政省に入省し郵政畑を歩いてきた人。2012年から2014年に日本郵便の副会長も務めた。

その、稲村さんは「郵政民営化は失敗だった。再国営化すべきだ」と言っている。

2023年5月12に出た日本経済新聞の記事に、日本郵政社長の増田寬也さんが「郵便局も整理が必要」と発言している。小泉内閣では、郵政を民営化すればバラ色の未来が開けると言っていた。アルゼンチンも民営化したが、半年でデフォルトを起こした。

その後、ニュージーランドでも郵政の民営化をしたが失敗した。

人口が地方で減少しているから郵便局の現状維持が難しいと日経新聞で書いているが、地方で人口減を起こした原因の一つに小泉内閣時代に地方に対する補助金が大幅に削減されたことがある。

元来、郵政には巨額に資産があった。それを原資とすることで新幹線や空港を作るときに外国から借金をしなくて済んだし、日本の小中学校は簡保の資金で作ることができていた。

稲村さんの意見では、郵政の貯金と保険を分離して、外国資本が巻き上げたのが「郵政民営化」の実態だったのではないかと考えているようだ。

資金準備金が10年前には簡保に115兆円あった。それが、現在では半分くらいになったのではないかと推計している。

郵便貯金の資金は、大蔵省の資金運用部が運用していたが、今は「日本トラスティ・サービス信託銀行」などに運用を丸投げしている。簡保は郵政省独自に資金運用していた。

郵政民営化は英語で「postal privatization」という。「privatization」は「私有化」の意味もある。ある特定の人たちに私物化されたのが小泉内閣が掲げた「郵政民営化」であった。

小泉総理が横浜の駅頭で「郵政は税金で飯を食っている」と言ったことがあるが、明治4年以来、郵政が税金で飯を食ったことはなかった。

郵政民営化は2007年に法制化された。2005年当時、全米生命保険協会の会長であったフランク・キーティングは「簡保をつぶせ」と言っていた。郵便貯金を潰せとは言わなかったのは、郵便貯金はアメリカ国債をたくさん買っていたから。

ジョージア州にある大企業でもないアフラックから、民営化した日本郵政の社外取締役に入ってきた。

IBMの社外取締役をやったりしていた東芝の元社長の西室泰三さんが東京証券取引所の理事長、日本郵政の取締役兼代表執行役社長会長の委員長を歴任したが、社長になったのはまずかった。この西室さんは、東芝の転落のきっかけを作った人と言われている。

この西室さんから稲村さんが「アフラックの話はしないで」とくぎを刺されたそうだ。ちょうど、高市議員が大臣に任命されたときに岸田首相から「中国とセキュリティ・クリアランスの話はしないで」と言われた構図と同じだ。

その西室さんの葬式にアメリカ人なども来るのか思いきや、一人も来ていなかったことからすると単なる手先だったのかもしれないと稲村さんは語っている。

西室さんが社長時代に、豪州の物流大手のトール・ホールディングスを6000億円を超えて買収した。結果は8200億円の損失を出したが、背任にならなかったし、マスコミも取り上げなかった。

特定郵便局長制度というのがあって、これは明治時代の政府にはお金が潤沢になかったから、地方の有力者に名誉を与えて郵便局長にした。戦後、国家公務員にした。

郵便はあまり儲からない。それを郵貯と簡保が支えるという構図を前島密が作った。それを壊したのが小泉政治であり、郵政民営化であったのだから、政治が直す以外に方策はない。

このまま放置していれば地方から郵便局が閉鎖してくる。これは、世界の郵政民営化が示している。そうなれば、ますます地方が疲弊していくことになる。

日本はこの20年で国民の財産を2割喪失している。欧州もアメリカも20年で2倍にしている。日本の金はどこに吸い上げられたのか?

小泉政権時代は、異論を唱えると刺客を送られた時代であった。それが大衆受けした時代でもあったが、所詮、ポピュリズムなんてのは政治を劣化させるだけだ。

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