「わかりやすい文章」とは

坪井忠二さんという方がいて「わかりやすい文章」という随想を書かれている。坪井忠二さんは明治35年生まれで東京大学の名誉教授。東京帝国大学物理学科で寺田寅彦に師事している。

その坪井さんが共通一次試験の問題を見て「実に情けない日本語が使ってあるもんだ」との感想を述べている。「あんな変な日本語を変だと思わずに問題を解くとするなら健全ではない」と憤慨しているエッセーである。

次の金属のうち、その4.0gを希塩酸に入れたとき、金属が反応して完全に溶け、その際発生する気体の体積が0℃、1atmで1.6リットルになるものを選べ

と言う問題が、何ともわかりにくいとしています。

次の金属のうち・・・選べ」は「次の金属のうち・・・どれか」か「次の金属うちから選べ」でなければおかしい。

金属が反応して」は「それが」で意味を成す。

金属が」と「体積が」と、主語が二つ出てきている。

次の金属」というがどれが次の金属なのかが最後まで読まなければ分からない。「下記の金属」とすれば出題意図を掴みやすい。

ある金属4.0gを希塩酸に入れたら反応して完全に溶けた。その際発生した気体の体積は0℃、1atmの時1.6リットルであった。下記に書かれている7つの金属から1つを選べ

とすると実にわかりやすい文章になる。

科学は物事を整然とすることに原点がある。文部省の指導要領には高邁な理屈がこれ見よがしに書かれているが、にもかかわらず少しも科学的でない文章が横行していることは矛盾である。

科学の教科書や論文をみてもすんなり頭に入ってくる文章が少ない。科学の文章に限らず理路整然とした文章を書くことは、書く内容を伝える最良の手段である。

文章を書くことは、独り言を文字にするのではなく、読む相手がいるということである。そこの理解ができずにわかりにくい文章を書いているということは、非文化的なことだ と嘆いています。

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