組織について勉強した《その1》

Edgar H. Scheinという人が書いた「組織心理学」という本を今から40年ほど前に読んで、いたく感動した記憶があります。一言で言えば、アメリカ人の組織管理と日本での組織管理が随分違うことに新鮮な学びがありました。

コロナ禍あたりから在宅勤務が常態化しており、大企業の経営者たちは口々に「雇用の流動化」などと言うようになっています。そこで、ふと思いついて40年前のアメリカの組織論を読み返してみようと思いました。

どのような組織にも、その中に多くの集団(サブカルチャー)が存在しており、その集団が職務遂行の質と量に対する基準を形成しています。各人の仕事の質や量は「全体としての組織」についてのイメージと関連しているといえます。

急速に変化する社会環境に対する適応能力は、組織に従事する個々の構成員が持つユニークな能力を成長させる組織環境をどのようにして作り出せるのかにかかっています。組織は、こうした「個人的」成長によって、変化する外部環境に対して適応していくことになります。

端的に組織とは何かといえば「共通目標」に対する「分業」と「統合」になり、「調整」が不可欠になります。「調整」において、何らかの権威に従うことになります。

ここで重要なポイントは、調整の対象は「人」ではなく「活動」であるということです。組織の観点からすれば、目標を達成するために必要な役割が明らかにされていれば十分です。誰がその役割を果たすかは、組織の概念とは全く関係がないわけです。

日本の組織では調整に必要な「権威」は、多くの場合、年功序列に依存しています。また、「調整」の対象は「ヒト」を通した「活動」になります。

組織を図式化すると、おおかたはピラミッド型の組織図になりますが、いかなる階層においても、組織目標を中心軸とすると、その中心からの距離は大きなファクターを持ちます。組織を構成する人材の中心度が中心に近いほど、その組織基盤は堅固になります。

単に給与・昇給や福利厚生のような経済的な刺激だけでは、組織が持つ中心力を向上させ続けることには限界があります。

日本では4月になると一斉に雇用して、雇用後に教育訓練をしていくスタイルがいまだに主流です。この方式は「ヒト」に仕事を付けるやり方になります。欧米では「仕事」が定義され、その仕事にヒトを付けるのが通常の雇用になります。よって、「Job Description(職務詳述書)」が前提となるわけです。

応募要件は「Job Description」で明確かつ詳細に定義します。審査を経て雇用された人材は、職務マニュアルを渡されて、それに従って求めに応じた労働をすることになります。

日本の就業環境で、厳密に職が定義され、マニュアルが準備されていることはマレなことで、大方は属人管理で事が済んでいます。なぜ、それでも整然と組織が機能するのかというと、就業者の質がいいこと。それは教育水準だけではなく、性善説に立つことができるほど善良であることを上げることができます。

そうした就業環境は、終身雇用と年功序列によって、安定していましたが、IT化が進み、AIが人間の知識や判断を上回るようになり、正確な労働はロボットのほうが圧倒的な生産量に寄与するようになると、企業の論理からすると「終身雇用」や「年功序列」こそが、企業の成長の足かせになってきています。

これからの組織の生長に欠かせない「創造」は、どうしても人に依存せざるを得ない部分ですが、人材と組織の関係性が大きく影響を持つ場面でもあるので、このあたりを無視して人材を流動化しても、きっとうまくはいかないと思います。

そうした課題の克服に関しては、いずれ触れることになりますが、40年も前の組織論が今なお新しさを感じられることには、新鮮な驚きがあります。

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