「くそ野郎」で裁判

2024年3月13日に控訴審の判決が出された。東京地裁が一部認めた内容を控訴審では否定をして原告の請求を棄却した。

こと発端はれいわ新選組の議員である大石晃子さんが、伊藤詩織さんと山口敬之さんの事件に関して山口さんを「思いあがったくそ野郎」とツイートしたことが名誉棄損に当たるかが争点で、地裁では「人身攻撃に及んでおり違法で、名誉毀損が成立する」として22万円の支払いを命じたが、東京高裁では、

「クソ」という言葉が直ちに人糞を意味するとは解されず「クソじじい」や「クソまじめ」、「クソ忙しい」などとののしりや強調の意味で用いられるとして「『クソ野郎』という表現は、いさささか品性に欠けるきらいがあるものの、他人に対する最大限の侮蔑表現であるのかは、疑問を差しはさまざるを得ない」

「『クソ野郎』との表現部分を含む記載部分については公共性及び公益目的が認められ、前提となる事実について真実であることの証明があり、意見ないし論評としての域を逸脱したとはいえないことにも照らすと、『クソ野郎』との表現が社会通念上許される限度を超える侮辱行為に当たるまでとはいえない」

辞書を調べると

[接頭]名詞および形容動詞の語幹、形容詞などに付く。
 卑しめののしる意を表す。「—坊主
 程度のはなはだしいことをののしる意を表す。「—いまいましい」「—まじめ」「—力」

にような意味もあるようで、「クソ野郎」は「程度のはなはだしい野郎」と解釈することもできる。

が、しかし、国会議員が1刑事事件もしくは民事事件の加害者に対して「クソ野郎」などと罵倒することにどれだけの公共性があるのかは凡愚には分かりません。

海外ではどうなのだろうと思って「クソ野郎」を調べると、「They Are Such an Asshole」とありました。「ass」は「尻しり,けつ;けつの穴」だそうで、「英語圏では『クソ野郎』という意味で広く使われる罵倒語」とありました。

アメリカでは「くそ野郎」は罵倒語ですが、「限度を超える侮蔑」かというと、「ののしり」ではあるけれど「侮蔑」のニュアンスは罵りの範囲を逸脱はしていないようでもあります。

ジョージア大学で「『biggest asshole(人生最悪のクソ野郎)』について」調べたところ、被験者のほとんどは「人生最悪のクソ野郎は、その人物を言い表す単語はクソ野郎に他ならない」とのことだった。そして、「人生最悪のクソ野郎はほとんど中年男性」だった。

「攻撃的」「怒り」「傲慢(ごうまん)」「偏見」「無神経」「好戦的」「支配的な振る舞い」「責任転嫁」「未熟」「不人情」「無責任」「言葉巧みに操る」「無礼」「その他(偽善やえこひいきなど)」の14カテゴリに大別できた。

クソ野郎の行動は低レベルの開放性や低レベルの協調性、低レベルの誠実性、そして高レベルの神経症傾向があることが示唆された。

「クソ野郎」で裁判をするというのも、大学で調査をするというのも、社会通念上、限度内の平和の証だとしましょう。

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