中国から日本企業が撤退するためには

「反スパイ法(中華人民共和国反間諜法)」が2014年の全人代で制定されている。これを改正するのだそうだ。このことで、中国進出の企業活動でも違法とされる懸念が増大する可能性が高まっている。

アメリカは懸念を表明している。とはいえ、トランプ政権時においてアメリカにおいて中国企業や研究者を排除してきたことも事実である。中国からすれば報復のつもりかもしれない。

とはいえ、アステラス製薬の社員がさしたる理由もなく逮捕されたりしている事実を踏まえると、こうした法改正をタイミングとして中国から引き上げる口実にすることはできるだろう。

理由もなく中国投資を放棄すれば株主から訴訟される懸念もあるし、そもそも、進出を決定したのは先輩、先々輩(下手をすると会長とか)なわけで、その顔をつぶすこともできないので、こうした法改正をうまく使って引き上げることが得策であるという主張もある。

国家は一般に司法、立法、行政という三権が独立しているのが原則であるが、中国には「規律」というのがあって、2018年までは共産党員に対してだけであったものを、憲法を改正して全国民に対象を広げた。

実はその時点において「監察委員会(いわば思想警察)」という機関が、時の都合で権力行使をして「規律に違反した」とすれば逮捕拘留ができるようになってしまっている。このような国ではまともな経済活動はできないという主張は、株主に対してできるロジックにはなりうる。

そもそも論でいうなら「法規制」が機能していない国を承知のうえで、何で日本企業が進出したのかという原点に立ち返る必要がある。国家制度(共産主義)も法体制も独裁者のいるような全体主義国家に進出した理由は明確で、いかなるリスクよりも経済的見返りが大きいと単純に考えたにすぎない。

お金を稼がせたら民主主義国家になるかもしれず、その時は14億人の市場を手に入れられるというはかない願望を抱いたのだが、昨今の面妖な中国共産党にいつまで利益を供与するのかは、資本主義の清浄化において考え直す時期に来ている。

とくにアメリカでトランプが出現することで国が二分化されていて、今後、どうなっていくかが見通せなくなっている。

日本企業の中国進出の形態は「直接投資」が多く、外国企業の多くは「間接投資」のほうが多いという。

直接投資とは、簡単にいえば中国に工場を作ったり設備を導入したりする形で経営に参加、あるいは実質的に経営をするような直接的関与をする形態に対し、間接投資とは、実質的に運営する企業に対して株式投資をして配当を得るような投資形態になる。

状況が変化したら撤退ができるような構造(例えば間接投資)をきちんと作っておくことが多国籍企業のマネジメントの重要なところであるのに、そこの見極めが日本企業は杜撰(直接投資のためにがんじがらめになっている)であるといえそう。そこがグローバル企業とマルチナショナル企業の違いになる。

これ以上、中国に利することは民主主義の棄損になっていき、世界が不安定化していくことは自明であるが、直接投資をした日本企業が、いつになったら撤退をするのかが見ものである。

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