円安の原因は金利格差か

実質実効為替レートが50年前からで過去最低になった。つまり、50年前よりも購買力が下がっている。

50年前は1ドル360円だった。そこから比べると2倍以上円高にはなっている。つまり、実質実効為替レートの低下を考えると決して円安だけではないことが分かる。

では、何が原因かというと「インフレ率格差」が主犯である。アメリカは過去50年でインフレがどんどん進んでいったが、日本はさほどのインフレにはならなかった。

50年前と比べてアメリカと日本で同じものを買うと70%くらい安くなっている。ここで、金融引き締めをして円高にしたところでインフレ率格差を埋めなければ半分ほどしか効果が望めない。

インフレ率格差を埋めていくためには、海外並みに物価賃金をあげていかなければ追いつかない。経済が好循環にならなければ実質実効為替レートを正常に持っていくことは出来ない。ここで金利を上げるなど金融引き締めをすれば、かえって経済にはマイナスになる。

名目賃金3%、インフレ率2%、実質賃金が1%上がれば出口は近いとみられるが、まだまだ、乏しい状況になる。

物価が上がれば税収が増える。増えた税収をどのように配分するかである。

なんで海外に比べて、こんなに停滞してしまったかというと、バブル崩壊後の経済政策を誤ったことにある。過去の異常な円高を放置してしまったがために国内の生産拠点が海外に出て行ってしまった。これらの海外拠点が日本に戻ってきて、貿易が盛んになれば円高要因になる。

もう一つの原因は、日本だけ、国民負担率がものすごく上がっている。国民負担率とは、個人や企業が稼いだ国民全体の所得に占める税金や社会保険料の負担の割合を指す。税金には所得税や法人税、消費税などが、社会保険料には年金や医療、介護保険などの保険料が含まれる。

式で表せば、分子に租税負担と社会保障負担、分母に国民所得がくる。

2023年度は46.8%の見通しで、国民所得の半分に近い。50年前は24.3%だったので、50年で倍増している。

これも日本の長期低下を長引かせている。

この根底には「財政均衡派」と「あげ潮派」の意見対立が今に至るまで解決がついていないが、今の現状を見る限りあげ潮派が正しかったと言える。物価が上がれば税収は増えるのは、事実であった。デフレ下で財政緊縮をしたことで、かえってデフレを長引かせてしまった。

要するに、単純に金融緩和をすれば円高になるわけでもなく、国力が低下していることに原因がある。国内生産を増やし、賃金を上げて、輸出を盛んにしない限り、この停滞が続くとみるべきで、春闘で大企業が多少のベースアップをしたところで、解消できるわけでもなさそうだ。

すべては「政治」にあって、官僚に裏付けを尋ねながら、官僚の知恵を使って政策を練っている限り、現状からの脱却は、きっと無理。官僚を下僕のように使う政治家の登場が待たれる。

といっても、他国の専制政治のボスのような無(負)意味な権力者による独裁が始まるなら、現状の無為無策に甘じるほうが良いのかもしれない。

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